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土門「辛」聞

汝の友、米国はジャパン・マネーをこうして食い物にする


 このIEEPAと呼ぶ法律は、77年に制定された。仮に日本が、米国債の大量処分を始めた場合、米国は日本を「敵性国家」に指定、「敵国条項」の発動により日本の米国内資産を凍結することができるのだ。つまり米国債は自由に処分できない“欠陥商品”であるのだ。

 日本郵政グループのゆうちょ銀行が09年10―12月期に、07年10月の郵政民営化後で初めて米国債を約3000億円購入していた。だが現物は日本にはなく、ニューヨーク連邦準備銀行(FRB)の地下金庫に保護預かりされている。日本国民のあずかり知らぬところで勝手に何かの質草にとられているみたいだ。

 この法律のことを調べていて分かったことだが、日銀保有の金(ゴールド)の現物も米国債同様に米国が保管し、米国の同意無しに処分できないという。日銀を含む、各国政府・中央銀行は、FRBに保有する金を預け、その預かり証券を持っているにすぎないというのである。


狙いは郵貯・簡保マネーか

 TPPにかける米国の思惑は、こうした流れの延長線上にあるというのが常識的な見方。さらなるジャパン・マネーの取り込みで、彼らが虎視眈々と狙っているのは、07年に民営化されたゆうちょ銀行(郵便貯金)やかんぽ生命(簡易保険)のマネーだろう。トータルで267兆円を超え、三菱UFJフィナンシャル・グループの124兆円をはるかにしのぐ規模である。米国債は、まだ微々たる量しか保有していない。さらなる米国債の購入に向けて圧力をかけるべくTPPを利用しようとしていると見るべきだろう。

 民主党への政権交代から3カ月後の09年12月、当時の鳩山由紀夫政権は、郵政株式売却凍結法を成立させた。小泉純一郎政権が進めた郵政完全民営化に歯止めを掛けようとしたのだ。ポイントは、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の全株を所有する日本郵政株式会社の株式については3分の1超を政府が常時保有することで、外資に渡らぬようにしたことである。

 米国の狙いは、米系金融機関に乗っ取らせるか、大株主として支配するため、日本郵政を上場させることだ。日本郵政が米系資本の手に落ちれば米国に有利な資金運用が期待できる。TPP問題の深奥には、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の豊富な資金をめぐり日本国債で運用したい国内の勢力と、米国債など外債で運用したい米国を中心とした外国勢力の争いがあるのだ。

 米国が、自由貿易の国であるという認識を、われわれはこの際、改めるべきである。米国は、自分たちが強い分野のみ自由を主張し、弱い分野は保護主義的になる。農産物貿易がよい例だ。米通商代表部(USTR)のカーク代表が4月10日、ワシントンで会談した玄葉外相に対し、TPPで決める物品の関税の詳細は、「今後の本交渉次第」との認識を示したとの報道が流れた。各紙は、「TPPは全品目で関税をなくすことを目指しているが、コメなど日本にとっての重要品目は例外扱いできる可能性があるとの認識を、米政府が初めて示唆した」(読売新聞)と解説した。お粗末なのは、これを「日本に譲歩する用意があると示唆したものだ」と早とちりし、それをマスコミにリークしたわが政府の交渉関係者だ。米国産の国際市場でのコスト競争力を知らないことによるデタラメ解釈。いまや中国産とスクラッチで競争すれば米国産はコストでは勝てないのだ。それ故にあっさりと譲歩すると言い出してきたものと受け止めるべきではないか。

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