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特集

今から始める漢方生産 全国に広がる契約栽培最前線

高齢化と健康意識の高まりで漢方薬の需要が増加している。栽培の研究や制度の整備が進めばグローバル化し世界中で使用される可能性もある。他方、これまで9割を輸入に頼ってきた漢方薬の原料は中国の規制等により量・価格ともに不安定になっている。急ピッチで進む国内での契約栽培に向けた動きを追う。取材・文/鈴木工・松田恭子 まとめ/松田恭子

漢方産業を知る8つの基礎知識

1. 漢方薬とは
もともと中国で発達し、5、6世紀頃日本に渡ったのち江戸時代に独自の発展をとげた伝統医学。自然界の植物や動物、鉱物など複数の生薬を組み合わせて作られ、一つの薬に多くの有効成分を含む。西洋薬が特定の症状をピンポイントで改善するのに対し、漢方薬は個人の体質や病気の状態にあわせて処方され、人が本来持っている自然治癒力を高める。

2. 国内の市場規模
高齢化と健康意識の高まりで2011年の生産量は1320億円と10年前の34%増(図3)。ここ数年は毎年ほぼ4%以上の伸びがある。しかし、医薬品全体に占めるシェアはわずか1.8%。中国の25%に比べるとまだニッチな市場だ。今後普及がさらに進めば、15年には2000億円に拡大するという予想も。

3.国内シェア
医療用漢方薬はツムラが8割以上と圧倒的なシェアを占め二位のクラシエ(1割)を大きく引き離す(図2)。85年以降新たに認可を受けた漢方製剤はなく148処方のままであり新規認可が困難であることや、ニッチ市場では病院での新規採用が難しいことが寡占の背景にある。一般用漢方薬は、クラシエ、小林製薬など4社で5割以上を占める。一般用漢方薬では08年以降毎年30前後の新処方が承認され294処方ある。医療用にない処方も数多くみられるもののミクロ市場の中でなかなか商品化が進まないことが悩みのタネ。

4. 医療現場での漢方の普及
09年行政刷新会議の事業仕分け作業で、医療用漢方製剤を健康保険から除外するとの方向性がマスコミで報じられた。これに対し、日本東洋医学会など4つの医療団体が3週間で92万名の署名を集め、民主党に漢方保険継続決定をうながし、改めて医療用漢方薬の普及が印象づけられた。01年、医学生が最低限履修すべき教育カリキュラムに「和漢薬を概説できる」との項目が加わり、04年度には医学科を有する全国80大学すべてで漢方医学教育が行われるようになった。09年には大学病院の9割で漢方外来が設置されたほか総合病院等での設置も進み、漢方を処方する医師の割合は8割以上に達している。

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