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【土門「辛」聞】
改革サボタージュに、統計の誤りが米不足を加速する
- 土門剛
- 第95回 2012年07月13日
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言い訳にならぬ弁解
質問「入札結果をどう見たか」
土門「2010年産の古米ですら1万3992円だったのは驚いた。12年産の新米より高い価格だ。これがすべてを象徴している」
質問「東日本大震災による倉庫で被災したコメ2万tと、放射能で被災したコメ2万tの特別隔離に伴う、合計4万tを代替供給するため『特例措置』として実施した、と農水省は説明しているが」
土門「確かにその通りだ。だがマーケットはそんな受け止め方をしていない。今回の入札結果を需給の先行指標的な意味にとらえている。不足は、何も低価格米だけではないのだ。標準クラスのコメも足らないのだ。コメ不足はちょっとパニックぶりで、2月、3月の農閑期に卸が出来秋のコメを確保するため、産地をかけずり回っているとみるべきだ」
質問「応札倍率は4.4倍でしたね」
土門「政府米の入札制度は11年4月に回転備蓄から棚上げ備蓄に変わり競争入札になった。回転備蓄制度の後半にも競争入札はあったが、応札そのものが少なく、本格的なものとしては今回が初めて。従って、過去の入札との比較は難しい。倍率から判断すると、作況指数74の平成5年(93年)の大凶作には及ばないが、今後の天候次第では、同90の平成15年(03年)に匹敵するぐらいの不作になることを想定しての入札ぶりという印象を受けた」
質問「何が原因か」
土門「やはり11年産が穫れていなかったことだ」
質問「作況指数は101で平年作以上だったが」
土門「その作況指数が間違っているのだ」
質問「またか」
土門「統計部は、間違った数字ばかりを垂れ流してきた。省内でも批判は相当に強く、幹部でも2ポイントぐらい差し引いたものが、実態だという見方をしている。11年産なら、実質99だ。これでも甘すぎる。筆者はマイナス4ポイントとみている。11年産なら、97ではないかと思っていたが、早くから業者が産地めぐりをしていたという事実、さらに政府備蓄米の入札結果、これらをみると、もう少し下かもしれない。現にコメ検査をやっている知り合いの生産者(秋田)は、『屑米が目立ち95であっても不思議ではない』と話している」
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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