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質問「米価の高騰か」
土門「デフレ下での米価の高騰。考えるだけでも恐ろしいことだ。だが価格は需給で決まる。不作になれば高騰する。コメも、この経済のメカニズムから免れることはできない」
質問「高騰すれば、政府備蓄米を放出すればよいではないか」
土門「ところが、それができなくなったのだ。以前なら、米価が高騰すれば、政府在庫米の放出で冷やしたり、逆に米価が下がると、政府が緊急買い上げして価格を維持することができた。棚上げ備蓄を取り入れて政府が市場介入を御法度にしてしまったのだ」
質問「高騰に打つ手はほかにあるか」
土門「ないと思う。ただスーパーなど買い手サイドが、バイイング・パワーを発揮して価格引き下げの圧力をかけてくることぐらいかな。輸入に期待しても、現行制度では年間輸入量は決まっているので価格を冷やす決定打にはならない。いくらスーパーでも、ないものには勝てず、米価の高騰に歯止めがかからず、消費者の不満が農政に向かう事態だって十分にあり得る」
質問「統計部のせいだけではすませられないね」
土門「そうだよ。統計にだけ問題があるのではなく、改革の遅れにこそ問題があるのではないか。出口の流通を完全に自由化しておきながら、入口の生産をそれに沿った体制に改革していないことに大きな原因がある。とくに生産調整は何の改革もなされていない。農水省が需要予測をして、それに沿って生産数量目標を立てて、都道府県に配分する仕組みはすでに破綻したとみるべきだ」
質問「どうすればよいか」
土門「出口を完全にフリーにしたのなら、入口もそれに沿ってフリーにすればよい。何も減反制度そのものをなくせと言っているのではない。先物市場を整備した上での選択減反制度の完全実施だ。その前にやることがある。生産者の選択の自由を奪うような仕組みを徹底排除することだ。生産調整に参加するかどうかは、行政が介入することではなく、市場の判断に任せることしかない。米政策の改革は、ここから始まる」
質問「農水省は、02年に策定した米政策改革大綱で、そのようなことを主張していたね」
土門「しかも10年に完全実施するとのロードマップまで作っていたよ。とくに生産調整についての約束は反古にされてしまったままだ。その天罰といったら言い過ぎかもしれないが、この出来秋に、米価高騰という形で農水省が世論の強い批判を受けるとなったら、あまりにも皮肉的すぎる」
質問「ありがとうございました」
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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