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新・農業経営者ルポ

お天道様とお客様 ビジネスとしての有機農業


 それぞれの店舗では、当然、ビオファーム松木の有機野菜を販売している。

 こうしてデリカテッセン、レストラン、カウンターレストランのことを紹介すると、人は松木をレストラン業者なのかと思うかもしれない。

 しかし、松木はこれこそ彼が考える有機農業農場のビジネススタイルであり、それは自分が農業者であればこそ実現できるビジネスモデルなのだという。

 厚生労働省の国民健康栄養調査によれば、日本人一人一日当たりの摂取カロリーは2004年に、日本人が一番飢えていたと言われる終戦翌年の1946年の水準と同じになり、その後も摂取カロリーは減り続けている。
人間にとっての食料の意味の本質は変わらないが、現代の日本人は、生き延びるために飯を食うという時代ではなくなった。例えば、ネットでコメの通販を申し込んでくるお客さんはコメを直売する農家のコメ品質と同程度のものであれば、もっと安くスーパーで調達できることを知っている。その客さんは、高いお金を払って、その農家やその背景にある風土や文化に触れることができる価値にお金を払っているのである。

 腹が一杯になることよりもっと満足度の高い食や暮らし方を求めているのだ。

 とりわけ、松木自身が一度はそこから逃げ出したように、現代はストレスに満ちている。それに対する最大の癒しが農業や農村あるいは風土そのものであればこそ、現代人は“田舎暮らし”に憧れるのだ。

 しかも、特殊な人を除けば、農業や田舎の素朴さだけは人の心は繋ぎ止めておくことはできない。最高の食や娯楽、そしてサービスとそれを修飾する物語が語られればこそ人は満足し、顧客として定着するのだ。

 そう考えれば、農業や農村、それも緑なす山河に取り囲まれたいわゆる中山間地域といわれる場所ほど、サービスがあり、語り部がそこにいるなら、最高のビジネススポットと言えるのだ。

 農業界の人々が利権を求めて被害者意識とともに問題的状況として語る農業・農村こそ、そこに大きな可能性があるのだ。

 松木は、農業の余所者だからそれがよく見え、そのチャンスを独り占めにするのではなく、ともに農業をする者、農業を目指す者にそのヒントを実践的に提供することを彼の使命と考えているのだ。

 それは、いわゆる六次産業化と言われるものであるかもしれないが、それを一つの経営の中で実現するのは決して簡単なことではない。例えば、農場部門で4000万円の売上目標を建てるなら、社内で売るより外に売ったほうが売上は上がる。そうなると社内の川下部門が困るのだ。そこで松木は、4haで幾ら売り上げたら合格かではなく、限られた面積の中でいかに作るかというのが農場のミッションだとスタッフに指示しているという。

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