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耕地面積の制約を克服する合理化の道
ブロッコリが氷詰めされてカリフォルニア州から輸入されている。ブロッコリのように鮮度を要求されるものが、どうして輸入できるようになったのであろうか。交通網が整備され、運輸技術が発達しているとはいえ、それだけの事情ではないと思える。
第一に考えられるのは、カリフォルニア州では安価に生産できることである。円高の日本に送りけければ、利益幅は大きい。ためらうことなく日本送りを考えるのであろう。消費地が遠隔地であることは、それほど問題にはならない。
では、なぜ安価に生産ができるのかを考えて見なければならない。カリフォルニア州は、土地や気象条件に恵まれていることは確かであるが、栽培様式が異なるのである。大規模畑作感覚の中で栽培されており、露地栽培・手作りとはまったく異なる。スケールメリットに加え、安い労働力に恵まれているのである。もちろん、農家の企業感覚(経営センス?)が優れていることも武器の内である。
それだけではない。今、流行の健康野菜を生産しているのである。耕地面積に余裕があるので、一般畑作物、あるいは緑肥作物と輪作を構成し、その上、畑地潅漑がしっかりしている。地力にも恵まれ、低農薬栽培が成立している。
これに比較して我が国の場合はどうか。多くは露地的栽培であり、耕地面積に制約があることから、野菜作主体であり、しかも経済作目を追うことから輪作体系が崩れている。多農薬・多肥栽培を余儀なくされているのが実態である。
労賃・生産資材・機材・地代が世界の水準を超えて高いものであれば、安価に生産しようにも、それは無理というものであり、品質も必ずしも保証されていない。では、野菜のような生鮮作物の聖域までもが侵されても、黙っていなければならないのだろうか。いや、手をこまねいてばかりはいられない。
米や小麦などの禾穀類が輸入されるについては、ある程度はやむを得ないとしても、生鮮作物まで輸入されるとしたら、それは日本農業の崩壊を意味するものと言ってもよいだろう。副食物すらまともに生産できない体質を問われるからである。
ここでは危機感を持って、新しい野菜作に取り組む必要があるのではないだろうか。優秀な日本民族なのである。その気になれば、絶望ということはないであろう。耕地面積に制約があろうとも、やり通すことはできると考える。合理主義に徹する何かがあってよい。
カリフォルニア州の稲作がなぜ高位生産であるのか。それは気象条件に恵まれているだけのことではない。田畑輪換の合理主義によってもたらされたものであると言ってよい。水稲と小麦の数年ごとの交互作であるが、ここにまずミニ輪作が成立している。水稲は連作可能な作物だからといって、それに甘んじることはない。より健全な生育を望み、あえて交互作としている。
水稲栽培時の水は、微量要素の供給源であり、病害虫の発生を抑制するものであることはよく知られている。しかし、長く水稲作を続けることは、土壌に還元層を形成することであり、水稲の生育にとっても決して好ましいことではない。
そこで、反転耕をして、土壌を乾燥させ、空気に触れさせて酸化、いわゆる乾上効果を求めることになる。我が国の以前の稲作ではこれを丹念に実施したものだが、それはどの効果ではないといつの間にか省略されてしまっている。
カリフォルニア州の場合、水稲作でも深耕・反転鋤込み耕をするが、それでも手ぬるいと数年で小麦作に切り換える。乾田化、小麦作で土壌の還元層はまったく消滅し、微生物は活発にうごめき、有機物を分解しながら団粒構造を形成する。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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