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忘れてはいけないのは、同じ茨城県内でも未だに大きな風評被害を被っている農家、農業法人もあるということだ。今後、地域・県としてどうやって挽回していくか、一緒に取り組んでいきたい。
氏家 福島第一原発事故の影響は、直接的にはなかったといっていい。ただ、当農場は東北電力の女川原発が決して遠くない地域、町の一部は30km圏内にある。もっともこの30km圏内・圏外という区域分けは、いざ事故が起きたときにほとんど意味をなさない。原発事故は人災と言われている。1年4カ月が経ったわけだが、生産者の戦いはむしろこれからだという思いを強くしている。
猪俣 私たちにとっては昨年7月以降が特に大変な思いをした。県、国の方針で、作付制限がない地域で基準値超のコメが検出したら、出荷制限はおろか、解除もしないということが決められていた。そして当農場のコメは、福島県内で最も早く刈り取るものだったので、うちの農場から検出されるとほかの地域にまで迷惑をかけてしまうという思いで、その不安から結果が判明するまでは夜も眠れない状態が続いていた。
また9月には独自に放射線測定器を導入し、乾燥機含め検査した。すべてND(不検出)だった。さらに精米の販売についても、精米のロットごとに計測し、QRコードを作るなどして情報開示を行ないながら販売した。そんなこともあって、もちろん、福島県全体としては総じて売れなかったが、会津地方のコメは風評で売れないということはなく、当社でも23年産米はすでに売り切れだ。
時間が経ってようやくセシウムを吸収するメカニズムなど様々な知見があきらかになってきており、それらをもとに、当社も水田にゼオライトや塩化カリを使用するなど対策を講じ、また分析も行なっているところだ。効果は確実に出ている。
福島県では24年産米について、全袋検査、100Bq以上の放射線量のコメは廃棄としているが、その基準に従って、当社でも全袋検査を行なっていく。それこそが福島県産米の風評被害を防ぐには今のところいい方法であると思う。
武田 たった1年4カ月しか経っていないにもかかわらず、社会の流れは速く、大きな影響も与えていることがよくわかったように思う。放射能問題については、農業者、流通業者ともに取り組んでいかなければいけない課題であり、これまでに得られた知見を対策に役立てていきたいと考えている。このトークセッションに加わってくださったパネラーのみなさま、ありがとうございました。
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