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さらに10年には自動化育苗施設を建てた。8万箱分の苗を育てる。瑞山のような大規模ほ場であればコスト削減を目指し、直播に取り組んで当たり前と考える読者も多いだろう。実際、現代グループが01年から湛水直播に取り組んだがうまくいかなかったという。今も干拓地にある水田の90%が移植栽培だ。
以前、林さんとは別に瑞山干拓地に入植し、100ha規模で直播を始めたという江原道の稲作農家に会ったが、収穫時に台風の影響もあり、11年で瑞山の農場そのものを引き払ったという話を聞いた。林さんに会う前に視察で訪れた稲作農家も「韓国ではまだ直播の技術が完成していない」と話していた。
つまり、林さんたちが建てた自動化育苗施設は、直播技術が確立されていないなか、200haを超える水田の田植えを行なうために欠かせない施設になっている。
同法人は、瑞山干拓地における代表的な大規模稲作法人にのしあがった。法人経営を始め、4年目から少しずつ黒字を出せるようになり、現在、売上は約30億ウォン(1ウォン=約0・07円)。
さらに国から「地域別最適経営体」として認定されている。これは、従来の個別経営から脱皮し、100~150haを単位とする法人(生産組織)に再編していこうという政策の一環で09年から導入した制度。認定されれば補助金や研修受講などメリットがある。林さんが会長をつとめる「米専業農」の会員農家は約7万人、平均の経営規模は4.5ha。「もっと大型化しないと生き残りは難しい」と林さんはいう。
実は、瑞山干拓地は別の面でも注目されている。大規模稲作が始まって以来、環境が変わった。電気もなく人が住んでいないこともあり、淡水湖の生物たちが訪れるようになったのだ。なかでも秋に入ると、200万羽ものトモエガモが渡来するようになり、“国内最大のトモエガモ渡来地”として知られるようになった。政府は干拓地内に100haの農地を買収し、鳥たちのための湿地を造成したり、農家にもコメの収穫後に、鳥の餌になる小麦を撒くように指示するなどかなり乗り気だ。
林さんたちも農作業が少ない11月から5月まで、消費者会員を相手にした農業体験プログラムを開く。20kg袋の精米・袋詰のラインも整備し、1/3は消費者などに直販。残りは価格や条件を見ながら、農協運営のRPC(Rice Processing Center。カントリーエレベータと精米施設を合わせた施設)か、民間業者が運営するRPCに出荷する。
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林鍾完 イムジョンワン
瑞山干拓地営農組合法人(韓国)
理事
1963年生まれ。84年、禮山農業大学校農機械科卒業。ソウル市で学習塾を経営した後、故郷に戻り、96年より就農。瑞山干拓地に入植し、03年に瑞山干拓地営農組合法人を仲間の農家とともに設立。現在の経営規模は219ha。12年1月から稲作経営者の組織「韓国米専業農中央連合会」会長、韓国農水産大学現場教授などをつとめる。
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