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【江刺の稲】
小麦とマカロニそして日本
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第197回 2012年09月14日
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イタリアにはマカロニやスパゲッティなどの乾燥パスタは原料をデュラムセモリナ粉と水で作ることが義務付ける法律があるそうだ。デュラム小麦とは地中海沿岸地域を原産とする極めて硬質な小麦で、それを粗挽きにしたセモリナ粉で作るマカロニやスパゲッティが本物だというわけだ。
イタリアは60年代でも世界トップのマカロニ輸出国であるが、小麦の輸入も日本やアルジェリアなどとともに常に世界のトップ3に入る。
FAOの統計でイタリアの輸出品を見ると、「Food Prep Nes(その他の食品加工品)」あるいは「Pastry(パンや菓子の生地)」などが常に上位にあり、それも小麦加工品の比率が高いはずだ。世界から小麦を輸入し、それをマカロニやスパゲッティに加工して外貨を稼ぎ、雇用を生み出しているのである。同じく小麦を原料とした日本の発明品あるインスタントラーメンやカップラーメンは、国内マーケット向けには日本国内の工場で生産されているが、世界市場には輸出ではなく海外で生産されている。制度は変わっても、国内麦を守るという理屈で食品企業はマークアップを上乗せされた高い輸入小麦を買わねばならないからだ。それが他の先進国に比べて我が国の農産物輸出が極端に少ない理由である。それが雇用機会を失わさせてきたのだ。
イタリアの小麦輸入と国内生産はどうなのであろう。輸入量は、1962年に約45万トンであったものが2010年には約185万トンで、その伸び率は16倍以上。一方、国内生産は1962年に約455万haあった小麦収穫面積は2010年には183万ha。半分以下の41%に減少した。
しかし、この間のマカロニの輸出額は260倍、輸出量でも約60倍にも伸びている。しかし、面積は半分以下に減少したが、イタリア農業が供給する小麦は、62年当時の72%を維持している。
これがオランダ、英国、ドイツ、イタリアなどヨーロッパの先進国の農業と食品産業の姿なのである。農業と食品産業はその国の食文化や技術開発力とともに一体的に成長するものなのである。日本の農業界の意識はまさに途上国だ。
日本でもゆめちからのような超硬質小麦が開発され、それを使った食パンを敷島製パンのような大手企業が商品化するだけでなく、中小メーカーにおいてもパスタや醤油、素麺などでも商品開発が進んでいる。
今さら過去の結果を嘆いても仕方がないが、農業・農村を一般社会から隔離し、それによって農業界の既得利権を守らせようとする農業政策は日本農業の自殺行為なのだということをいい加減に気づくべきだ。
イタリアは60年代でも世界トップのマカロニ輸出国であるが、小麦の輸入も日本やアルジェリアなどとともに常に世界のトップ3に入る。
FAOの統計でイタリアの輸出品を見ると、「Food Prep Nes(その他の食品加工品)」あるいは「Pastry(パンや菓子の生地)」などが常に上位にあり、それも小麦加工品の比率が高いはずだ。世界から小麦を輸入し、それをマカロニやスパゲッティに加工して外貨を稼ぎ、雇用を生み出しているのである。同じく小麦を原料とした日本の発明品あるインスタントラーメンやカップラーメンは、国内マーケット向けには日本国内の工場で生産されているが、世界市場には輸出ではなく海外で生産されている。制度は変わっても、国内麦を守るという理屈で食品企業はマークアップを上乗せされた高い輸入小麦を買わねばならないからだ。それが他の先進国に比べて我が国の農産物輸出が極端に少ない理由である。それが雇用機会を失わさせてきたのだ。
イタリアの小麦輸入と国内生産はどうなのであろう。輸入量は、1962年に約45万トンであったものが2010年には約185万トンで、その伸び率は16倍以上。一方、国内生産は1962年に約455万haあった小麦収穫面積は2010年には183万ha。半分以下の41%に減少した。
しかし、この間のマカロニの輸出額は260倍、輸出量でも約60倍にも伸びている。しかし、面積は半分以下に減少したが、イタリア農業が供給する小麦は、62年当時の72%を維持している。
これがオランダ、英国、ドイツ、イタリアなどヨーロッパの先進国の農業と食品産業の姿なのである。農業と食品産業はその国の食文化や技術開発力とともに一体的に成長するものなのである。日本の農業界の意識はまさに途上国だ。
日本でもゆめちからのような超硬質小麦が開発され、それを使った食パンを敷島製パンのような大手企業が商品化するだけでなく、中小メーカーにおいてもパスタや醤油、素麺などでも商品開発が進んでいる。
今さら過去の結果を嘆いても仕方がないが、農業・農村を一般社会から隔離し、それによって農業界の既得利権を守らせようとする農業政策は日本農業の自殺行為なのだということをいい加減に気づくべきだ。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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