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編集長インタビュー

行動することによって規制を外していこう 多様な可能性を秘めた麻産業

大麻草は伝統的な繊維をはじめ、工業製品や建材の材料、食品、医療、エネルギー燃料など多くの産業分野から国内生産を望む声が高まっている。しかし、我が国においては大麻取締法によって栽培や試験研究が厳しく制限されている。産業用大麻を普及し、新たな産業を振興するために先ごろ北海道ヘンプネットを立ち上げ、北海道で栽培免許の取得支援などの活動している菊地治己氏に話を聞いた。

日本一メジャーな作物から日本一マイナーな作物に

昆吉則(本誌編集長) 前々号で、薬草を取り上げたんです。それは加工や商品開発も含めた形で連携していける情報を提供する狙いだったのですが、実際にそうやって産業的に大麻を扱おうというのが菊地さんの活動ではないかと思い、今日は声をかけさていただきました。まずは大麻に関わった経緯を教えてください。

菊地 私は北大の大学院から北海道立農業試験場に就職し、主に水稲の品種改良に携わっておりましたが、2002年に北見農業試験場に転勤し、そこで、当時、産業用大麻を活用した新たな産業クラスターの立ち上げを目指しておられた麻プロジェクトのリーダーの舟山さん(※編集部注:2012年9月号特集に登場)と出会ったわけです。ある日、舟山さんが東京からお客さんを案内して農試に来られましたが、大麻関係者と聞いてたいへん驚きました。というのは、大麻イコール麻薬と思っておりましたので、どんな人たちかと。ところが、麻薬どころか、ヨーロッパやカナダでは、マリファナにならない産業用大麻(ヘンプ)が大規模に栽培され、大麻産業があると聞いて、二度びっくりでした。
 その後、私は中央農試へ異動となりましたが、地元の要望もあり、北見農試で大麻の栽培試験をやってもらうことになりました。研究目的は、畑の余分な肥料分を吸収するクリーニングクロップとしての大麻の能力を確かめることでした。その結果、ha当たり最大50tというとてつもない乾物収量が得られました。乾物というのは、水分を含まない乾燥物のことです。ちなみにお米の収量が玄米でhaあたり約5t程度ですから、なんとその10倍もあり、バイオマス作物としても極めて有望なことがわかりました。現在の技術では、50tのバイオマスから約10tの軽油を再合成できますので、大麻をうまく活用すればエネルギー自給型の農業も夢ではありません。それ以来、新たな農作物としての大麻の可能性を訴えてきましたが、昨年3月の定年退職を機に、日本一メジャーな作物であるイネから日本一マイナーな大麻草(アサ)へ乗り換え、残りの人生を産業用大麻の普及に捧げようと思っています(笑)。


昆 この前、シンポジウムをされていましたね。あれはどんなことを?

菊地 昨年、ヘンプカー北海道の実行委員長として、ヘンプ油で走る宣伝カーで道内を約一か月まわり、大麻の有用性を訴えました。今年の2月には北海道ヘンプネットを立ち上げ、3月には栽培免許の取得にむけた講習会を開催しました。農作物としての麻の用途には、繊維のほかに、プラスティックなどの加工原料、実や油などの食品がありますが、北海道では地域の農業経営の特徴に合わせて、伝統的な小規模栽培(上川地方)や大規模機械化栽培(北見・十勝地方)が可能です。

昆 今、北海道で大麻を作ってる生産者は何人くらいいるんですか。

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