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【海外レポート】
Agritec2012&イスラエル農業訪問記 最終回 砂漠農業は環境負荷が低く持続性が高い
- 有限会社川田研究所 取締役 川田肇
- 第4回 2012年09月14日
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ハイテクデータ農業の現実
今回イスラエル農業視察ツアーに参加した。理由はイスラエルのハイテクデータ農業と砂漠農業の現実を見て肌で感じてこようと思ったからである。
筆者の所属する川田研究所は様々な岩石からミネラル分を抽出し、目的別のミネラル溶液を製造している。農業に関しては例えば、土壌の微生物相を整えるための溶液だったり、植物の生長を促す溶液だったりと、数種類の農業用ミネラル液を開発している。また土壌分析、植物体分析も行っており、土壌の三要素(物理性・化学性・生物性)をトータルに調べて、栽培上の問題点、改善点などを生産者に提示している。
ツアーの初日はアグリテック2012の展示ブースを見てまわった。点滴潅水の本場だけあって点滴システムのブースが多くあったが、特に目に付いたものはこれまでの連載にもあったphytECh社の作物センサーであった。このセンサーは作物の生長をひずみゲージで捕らえ、ミクロン単位でモニターすることができる。作物の生長と水分や肥料を施すタイミングや気象状況などの関係を厳密にデータ化できると思った。
もう一つ興味を持ったブースは養液栽培用の培土の企業である。ココピートなどの有機物に発泡させた様々な岩石を混入していた。酸性の溶液を流せば岩石からミネラル分が溶け出し、作物が吸収しやすくなる。とても合理的だと感心した。土壌に関する新規な計測器を期待したが残念ながらそのようなブースは見当たらなかった。
集団農場「キブツ」を知る
2日目から生産現場の視察であった。道中ガイドの話や農業技術通信社の浅川さんとの会話からイスラエル農業のベースにはキブツ(集団共有農場)やモシャブ(家族農場共同体)などの集団的な共同体の存在があることがわかった。恥ずかしながら筆者はキブツのことをほとんど知らなかった。こうした集団農場はイスラエルの全農産物出荷額の約8割を生産し、キブツ内には農場以外に様々な企業が存在し収益を上げている。日本でも有名なネタフィム社もキブツから生まれたグローバル企業である。キブツでの生活は基本的に無料であるため、社会のセーフティーネットとしての役割も果たしており、日本でも今後参考にできることは多いと感じた。よってイスラエルの農業はキブツなどを中心とした集団農業であり、資金、労働力なども日本に比べれば非常に潤沢であると思われる。
5、6箇所の農場及び農業試験場をまわったが、特に印象に残ったのはネゲブ砂漠にある農業試験場であった。この試験場は砂漠のど真ん中にあり、年間降雨量80mm程度しかない。地下数百メートルにたまり水がみつかり、この水を汲んで様々な農産物の試験を行っている。
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川田肇 カワダハジメ
有限会社川田研究所
取締役
1966年東京生まれ。筑波大学大学院物理工学修了。高エネルギー物理学研究所(現高エネルギー加速器研究機構)非常勤研究員後、川田研究所に入社現在に至る。工学博士。
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