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“被曝農業時代”を生きぬく

「現状復帰には何十年かかるかわからないが、生き残っていくには品質のよい品物をつくり続けるしかない」

今回は、福島県須賀川市で渡辺果樹園を経営する渡辺喜吉氏にお話をうかがった。渡辺果樹園のある須賀川市は、福島県のほぼ中央に位置する。渡辺氏は、約3haの土地で高水や豊水などの和ナシやラ・フランスなどの洋ナシを栽培し、東北から関東地方の量販店に出荷するほか、全国に直売している。

 昨年の原発事故後、渡辺氏はいち早く日本GAP協会の放射線検査プログラムを活用し、土壌や果実の放射能検査を実施した。県内の個人農家で初めての試みだった。検査結果は逐次、顧客に報告。個々のナシに放射能が検出されなかったことを証明するシールを張り付けて出荷するなど、徹底して品質の保証に努めている。


ギフト売上が大幅ダウン

 ナシは昨年の8月下旬から12月下旬まで販売しました。放射能検査を実施し、検査結果を報告してきたおかげで、スーパーなどの量販店は例年通りの売上でした。けれども、お歳暮用のギフトの売上が7割も落ち、これは痛手でした。この分のナシは、量販店で販売できたので、売れ残ることはなかったのですが、ギフトの単価のほうが高いので、全体としての売上金額は減りました。

 北海道から沖縄まで全国にいる個人のお客さんに、検査結果をつけて商品案内を送りました。東京くらいまでの東の地域のお客さんからは、そこそこ注文があったのですが、西へ行けば行くほど注文が減りました。毎年注文してくれるお客さんも「今年は休みます」って……。「本当に大丈夫なんですか」という問い合わせもずいぶんありました。それでも、お客さんにはずいぶん応援してもらい、得意客の自宅用注文は2割減になんとかとどまりました。


損害賠償請求も個人で

 東電への損害賠償請求は、すべて個人でやりました。過去3年間の確定申告のデータをもとに月別の売り上げを整理して、損害額を計算し、放射能検査にかかった費用なども加えて東電に請求しました。請求は3か月ごとに行うことになっているので、去年の8月下旬から11月下旬までの分を1月に、12月から2月までの分を3月に分けて申請しました。どちらも1か月後には、保証金が出ました。

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