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“被曝農業時代”を生きぬく

「現状復帰には何十年かかるかわからないが、生き残っていくには品質のよい品物をつくり続けるしかない」



1カ月がかりで除染

 2月には、農園の除染を開始。農園には1000本の樹木がありますが、そのすべての粗皮削り取りと高圧洗浄を行ないました。枝や幹の上に落ちた放射性物質が果実に移行するというので、幹の上を中心に除染しましたが大変でした。地域の人に手伝ってもらい、5、6人がかりで1カ月かかりました。土の上に放射性物質が落ちましたが、根からはあまり吸収しないということですので、そのままです。でも放射性物質が広がると困るので、表面の土壌をなるべく動かないようにしています。表面の土壌を削るという方法もありますが、削り取った土壌を処理する場所がないですからね。国や県の指示があるまで、とにかくそのままにしておくしかありません。県からは、ゼオライトや堆肥を畑にまいて、放射性物質を吸着させるとよいといわれましたので、堆肥をまきました。


栽培は例年通り

 今年も、和ナシ、洋ナシとも例年通り栽培しています。原発事故のちょうど1年前に作付面積を1haほど広げて、新たにモモの栽培を始めていました。植えた後に事故が起きてしまったのですが、栽培は順調です。今年の12月には定植をして、来年には果実が実る状態になると思います。

 放射能検査も去年と同じように日本GAP協会を通じて行っています。農産物の基準値が、500Bqから100Bqになりましたし、1~2Bqの値でもお客さんはいやがりますから、検査の下限値を昨年の20Bqから5Bqにしました。7月に行った検査では、すべて5Bq以下の結果です。10月までに全品種の果実の検査を行います。基準値が厳しくなったので、私たち生産者は一層の努力をしているのですが、消費者には基準値が変わったことがあまり浸透していないようです。国はもっと広くこのことを伝えてほしいです。

 8月下旬からいよいよ収穫です。ナシの実はもう野球ボールくらいの大きさまで生長しています。生産量は平年並みでしょう。猛暑のおかげで甘くてみずみずしいナシになると期待しています。すでに1000人近くの個人客に、今までの経過を記載した商品の案内書を送りました。取引先との商談も間もなく始まります。


地域のつながりが強まった

 今年の目標は、昨年減ってしまったギフトの売上を戻すことです。個人のお客さんも自宅用には注文してくれたのですが、ギフトというと二の足を踏んでしまったようです。ギフトも注文してもらえるよう、放射能検査の結果とともに、私たちのナシづくりの理念とか農作業の様子などをお客さんにどんどん伝えていきたいです。ただ、直販のお客さんには伝えることができるのですが、量販店では売り場の面積が少なかったり、お店の事情があったりしてなかなかできません。せめて放射能検査の結果だけでも、店頭に表示してもらえるようお願いするつもりです。

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