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【土門「辛」聞】
初の売上高5兆円突破、通販市場を分析してみた
- 土門剛
- 第97回 2012年09月14日
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農産物のネット産直市場の好調さを証明するのは、いささか工夫を要する。業界団体がないので情報もない。役所の統計資料もない。関連資料で裏付けるしかない。その一つが、公益社団法人 日本通信販売協会(略称=JADMA、正会員 511社)が調べた通信販売市場、つまり通販市場の売上高の調査結果(速報ベース)である。
この統計は、アマゾン、楽天、ヤフーなどオール・ジャパンの通販ビジネスを対象にしたもので、農産物やネット産直に限定したものではないが、それらしき傾向をつかむことはできると思う。それを念頭に調査結果を紹介してみたい。
通販市場は、2011年度(11年4月―12年3月)に初めて5兆円の大台に乗ったということだ。しかも10年前の約2倍になったという傾向は、農産物のネット産直市場にも当てはまると思ってよい。
もっと分かりよいのは、宅配業界最大手のヤマト運輸のクール宅急便の取扱個数だろう。農産物を含めた生鮮品は、低温で輸送するクール便を利用することが多い。クール便の伸びをみれば、ネット産直市場の伸びを確認できると考えたのだ。
クール宅急便の取扱個数は、09年3月期からヤマト運輸の決算資料で公表されるようになった。ハイピッチではないにしても、順調に増えていることが分かる。
通販のルーツはトウモロコシ
ひとくちに通販といっても、情報の媒介別に、カタログ、テレビ、インターネットなど4つか5つのカテゴリーに分けられる。代表的なものを簡単に説明してみよう。
【カタログ通販】通信販売のルーツといってもよい。通販の第一世代としておこう。歴史は古く、19世紀後半の米国で普及した。近くに商店のない農民が主な顧客だったらしく、カタログを送り、郵便で注文を受けていたという。そこからメール・オーダーとも呼ばれている。日本でも明治初めに、通販が始まった。農学者でキリスト教の伝道師でもあった津田仙(1837-1908)が、米国産トウモロコシの種を売るために利用したのが、日本における通販ビジネスのとされる。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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