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特集

レストランとコラボする 前編 地元食材を使いこなすシェフの情熱と力量



【北陸に根づいたフランス料理】

 フランス料理店のオーナーシェフの小西さんは、1930年に西洋料理サロンを創業した父を持つ。富山県内の進学校を卒業し日本大学商学部で学ぶかたわら、東京のホテルやフレンチレストランで伝統的なフランス料理と現代的なフランス料理の両方に触れ、69年に富山に戻り『レストラン小西』を開店した。北陸では、フランス料理はもとより洋食店も珍しかった時代、フランスパンが調達できず自前で焼き始め、以来43年間にわたり毎日自家製のフランスパンを焼いている。

 お客様にフランス料理を知ってもらうため、アラカルトではなくコース形式とし、当時富山ではあまり知られていなかった食材は、オーダー以外にサービスで提供した。10数年にわたる啓蒙的な取り組みが実り、現在では本格的なフレンチの老舗として、二世代、三世代にわたる常連から絶大な支持を受けている。


【地元の食材を積極的に使う】

 小西さんの店は、1万円、1万2千円、1万5千円のコース料理のみ。伝統的なフランス料理を出す店と評価される一方、地元の食材を積極的に取り入れることでも知られる。例えば、岩牡蠣や白エビなど富山湾の旬の魚介だけでなく、富山産の赤米や野菜、果物も料理に取り入れている。30年間、毎年料理修業のためフランスやヨーロッパを旅して食べ歩いてきた小西さんからみると、富山は食材の宝庫。「料理人として、身の回りにあるものを使うのは、当たり前」と考え、昔から缶詰のエスカルゴではなく、バイ貝を使うのにためらいはなかった。また、25年くらい前からは滑川市で西洋野菜を作っている奥平さんから野菜を仕入れるようになった。


【素材の良さを引き出す時代】

「30年前から本場フランス料理の大きな流れは変わってきた」と小西さんは言う。健康志向でフランス料理といえども過度の脂肪や炭水化物を控えるようになった。背景には料理技術の変化がある。42年前パリの魚は食べられたものではなかったが、流通インフラの整備により、今やスイスの山中でも生きた魚が届き、さっと湯がくだけで食べられるようになったそうだ。素材が良ければ、バターや生クリームを大量に使った重いソースをかける必要はない。ましてや、富山湾で水揚げされる脂の乗ったブリにはこってりと重いソースは合わない。素材に合わせた料理技術の再構成が求められるということなのだろう。
 昔、フランス料理の本で「カブを20分炊く」という説明を見て、日本のカブを炊いてみた小西さん。20分後、カブは溶けてなくなっていた。日本の野菜は水の料理に合う食材だから柔らかくアクがないそうだ。従来は、日本の野菜のこの「柔らかさ」が西洋料理で使う場合の欠点だとされてきた。しかし最近、フランス料理の本場で柔らかい日本の野菜が受け入れられつつあるように、フランス人の野菜の考え方も日本料理の影響を受けて変わってきたようだ。

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