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危機に直面する伝統産地 そこにある問題と可能性

電照菊(その1)原油高への対応

秋の夜長に煌々とともる電照菊のハウス群は愛知県東部、東三河の名物である。その明かりがいま、揺らいでいる。かねてからの菊の消費減と輸入増に加え、原油高がじわじわと押し寄せてきたからだ。かさみ続ける経費と減り続ける需要の狭間で、日本を代表する施設園芸地帯の農業経営者たちはどこへ向かおうとしているのか。

 9月上旬、電照菊の取材の最中に車で偶然通りかかった愛知県田原市の畑では、パイプハウスが重機によって崩されているところだった。赤茶色にさびた鉄の枠組みは、よく日焼けした60代とみられる男性が巧みに操るショベルによって押しつぶされ、小さな塊にたたまれていく。近寄って話を聞かせてもらった。

 「油があまりに高いから、今年だけで3haのハウスをつぶしたね。ここもそうだけど、どこでもこれからは冬キャベツを作るみたいだ」

 農業の経験があるという解体業者の男性によると、重油の高騰を受けて菊を作る多くの農家は、ガラス温室に比べて加温効率の劣るビニールハウスを相次いで取り壊している。そして、更地にした畑で菊の代わりに作り始めているのがキャベツだ。

 田原市に本店があるJA愛知みなみ管内では近年、相場が好調なキャベツの生産が増産基調にある。他人に貸していた農地を返してもらい、植え付けを始めたり面積を広げたりする農家も出ている。

 昨年末にはキャベツがとりわけ高単価を付けたため、「いまの菊の値段じゃ、油をたくだけ赤字になるからね。今年はもっとキャベツが増えるんじゃないか」。そう話し終えて男性が操縦を再開した重機の向こうでは、ちょうど農家が移植機でキャベツの苗を植え付けていた。


日本一の「電照菊」産地、作付面積も出荷量も減少傾向

 愛知県は菊の作付面積で1324ha、出荷量で4億6520万本(ともに2010年産)の実績がある。それぞれ占有率は全国の25%、28%と日本一を誇る。この大部分は人工照明によって開花を抑制する栽培法で育てる、いわゆる「電照菊」である。

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