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その生産拠点が県東部の東三河であり、田原市に代表される渥美半島である。豊橋市から三重県の伊勢に向けて横向きに突き出したこの半島は、「常春半島」と呼ばれるほど一年を通して温暖な気候に恵まれている。そして一大消費地である関東、中京、関西のいずれにも近いこともあり、全国でも有数の農業地帯を築いてきた。
JR豊橋駅から田原市に車で向かう途中、いくつも小さな直売所があり、そこでメロンの看板を何度も見た。また、キャベツや肉用豚、トマトなどの特産品もある。しかし、その代表格は何と言っても菊である。田原市は市町村別の農業産出額で全国1位を記録してきた。その総額724億円のうち菊を中心とする花きだけで実に354億円(いずれも06年実績)と半分を占める(注)。
田原市といえばもう一つ、レクサスを製造するトヨタ自動車の国内最大の工場がある。「電照菊とレクサス」は人々の暮らしを支えてきたものとして田原市、あるいは渥美半島のシンボルといえるだろう。取材で出会った農家の大羽吉幸氏(54)は「菊で儲けたら高い車を買うというのが、昔は当たり前だったね」と振り返る。
しかし、いまこの半島を巡ると、かつてのような勢いがないことを感じる。筆者は4日間にわたり半島内を車で回ったところ、しばらく耕作されていないのだろう、破れたビニールの向こうは雑草だらけのハウスを何度か見かけた。今のように重油が高騰する以前から、すでに彼岸や盆、葬儀での需要が低迷し、日本を代表する花の消費は落ち込んでいる。
全国で菊の作付面積は99年を境に減少傾向にある(図1)。同年は6280haだったが、11年には5233ha。愛知県でも同じ期間で1490haから1286haに減った。この間、単位面積当たりの収量が伸びているわけではなく、当然ながら出荷量は減り続けている。
一方で輸入品は増えている。財務省の貿易統計によると、この10年間で数量ベースにして3倍以上という急激な伸びを示している。輸入先は気候条件から無加温で作れるマレーシアやベトナム、中国など。しかもスプレーギクに限っていえば、すでに国産の単価と変わらない。
重油高で相次ぐ作型変更 全国的な供給過剰に
消費の減少と輸入の増加でじわじわと農家の経営体力が落ちてきたところに、割って入ってきたのが原油の高騰だった。
農業用施設で使うA重油の納入価格(可積載量8キロリットル以上の大型ローリーの場合)の推移をみてみたい。09年5月までは1リットル当たり50円を切っていた(図2)。それからじわじわと上がり始め、昨年2月には70円、3月には80円を突破。以後、70円から80円の間を行き来している。
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