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【専門家インタビュー】
日本の漁業を復活させる処方箋
- 三重大学 生物資源学部准教授 勝川俊雄
- 第1回 2012年10月12日
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『漁業という日本の問題』著者 三重大学 生物資源学部准教授 勝川 俊雄
―― 本日は漁業について、いろいろと教えてください。よろしくお願いします。
勝川 よろしくお願いします。
―― 本誌は農業雑誌ですので、読者の方たちは漁業をほとんど知りません。まずお聞きしたいのは、日本の漁業の現状についてです。
勝川 日本の漁業は衰退の一途です。乱獲によって、魚の多くが人間の食べるサイズに達する前に漁獲されています。いま日本で一番多く獲れるのはサバ類なんですが、非食用、つまり養殖の餌になるような小型魚が漁獲の大半を占めています。日本の漁業全体がこのような状況になっています。
―― なぜそんな状況に?
勝川 いたって単純で、魚が成長する前に獲ってしまうからです。これは本当にもったいない話なんですよ。何年か待てば、個体数は減りますが、それ以上に個体が成長することで、価値が何倍にも増えるケースがたくさんあります。養殖の餌にしているような100グラムのサバは、1尾10円にもなりません。これをあと3年だけ待って500グラムくらいの食用サイズにしてから獲れば1尾80円程度になる。海に泳がしているだけで、何倍もの価値が出るんです。農業だったらあり得ないですよね? 価値が出る前に収穫して出荷しているようなものですから。
―― あり得ないです(笑)。しかしなぜそんなバカな話に?
勝川 これも簡単で、適切な漁獲規制が無いからです。だから早獲り競争になる。国の規制がない中で、早獲り競争でみなが頑張れば、当然、成魚は減っていき、より小さいな、より利益のない魚を獲るしかなくなっていきますよね。そして単価が安いからまとめて獲ろうと、みんなが目合いの細かい、大きな網を使うようになる。みんなで競って未成魚を獲りまくるわけです。これでは水産資源も傷むし、漁業の利益もどんどん減っていきます。
―― やはり技術の発達も大きいですか?
勝川 魚群探知機の普及が大きいですね。これで未知の漁場が開発されつくした。それからソナー。ソナーのおかげで1キロ、2キロ先の魚群までわかるようになった。魚群の大きさや方向がわかるわけですから、待ち伏せして一網打尽にすることができる。漁獲効率がグッと上がりました。このように、魚を獲る技術はものすごい勢いで発達しているのに、魚を残す規制がまったく追いついていない。それどころか、水産庁は網を大きくするために補助金を入れている。
―― 終わりの始まりを早くしている、みたいな話ですね。
勝川 まさにそうです。たとえばクロマグロだって、漁獲の9割が0歳、1歳という未成魚です。カツオみたいな大きさで獲っちゃってる。そんなことをやっていれば、マグロが獲れなくなるのもあたり前だし、マグロを大事に獲ってきた1本釣りなどの伝統的漁法が廃れてしまうのも当然です。しかも、稚魚から根こそぎ獲っていくような漁業を公的資金で後押ししておいて、その結果、地方の漁村が廃れていくと、今度はそっちもなんとかしようと補助金を入れる。支離滅裂ですよ。
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勝川俊雄 カツカワトシオ
三重大学
生物資源学部准教授
1972年東京都生まれ。三重大学生物資源学部准教授。専門は水産資源管理と水産資源解析。東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得。東京大学海洋研究所助教を経て現職。研究のかたわら、政策提言のほか、持続可能な水産資源管理や、漁業の制度改革に向けた活動を行っている。
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