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専門家インタビュー

日本の漁業を復活させる処方箋



ニュージーランドの漁業改革

―― ニュージーランドも成功した例としてよく耳にします。

勝川 まったく同じ流れです。国家財政が厳しくなって、これ以上、漁業を保護できないから、漁師にも税金を納めてくれ、と。そこで86年にITQという個別譲渡可能な個別漁獲枠制度を導入しました。最初は沖合漁業だけに入れたんですね。それまでアメリカや日本の大型船が来て、ニュージーランド沿岸で獲りまくっていたんですが、それをEEZを使って追い返した。で、沖合で自国の漁業を仕分けするときにITQを入れた。新しいところに入れるかたちだったので、入れやすかったんですよね。
それが非常にうまくいったので、沿岸漁業にも導入しようとなったのですが、これがものすごい抵抗にあうわけです。当時の漁業改革の矢面に立った人にもインタビューをしたんですが、説明会に行くたびにトマトを投げられたり、もう大変だったらしいです。でも導入してみたら、「あ、こっちの方が儲かるじゃん」って漁業者はすぐわかるわけですよ。そうしたら手のひらを返したように支持されました。

ニュージーランドのような経済優先の枠組みを導入すると、日本だと地方の小規模漁村が潰れてしまうと批判する人が多い。現地の人に聞くと、そんなことはないみたいなんです。自分の目で確認するためにニュージーランドで一番辺鄙だと言われている漁村に実際に行ってみました。チャタム島という離島で伊勢海老やアワビを獲っているところなんですが、みんな資源管理を支持してましたよ。「これがなかったら、この島の漁業は消滅してたよ」ってみんな言っていました。


―― 漁業改革には、もう証明された「正解」があるということですね。

勝川 そう、やるべきことは、もう何十年も前から明らかなんですよ。あとはどのように導入するかだけです。ニュージーランドのようにまとめてトップダウンで入れるか、オーストラリアのように入れやすい規模のところからはじめるか。それから、漁獲枠の取引をどうするか。ニュージーランドのように自由競争でやっていくという考え方もあるし、ノルウェーのように漁船に貼り付けるという方法もある。
いずれにしても、日本のような乱獲は問題外で、漁獲高を規制して早獲り競争が起こらないようにするというのは世界の常識です。にもかかわらず、日本だけはいまだ「現状で何の問題もない」と、誰も得をしない漁業のあり方を維持するために頑張っている。

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