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日本の水産予算は世界一
―― そんな日本は、水産予算が世界一ですよね?
勝川 世界一です。しかも三陸の再整備が入るので、ダントツとなります。
―― 2位はどこですか?
勝川 EU全体で2位です(笑)
―― EU全体で2位ですか! それは農業よりひどいですね(笑)いずれにしても、処方箋としては簡単ですよね。異常な状態から正常な状態になればいい。
勝川 ノルウェーの漁業者に話を聞くと、「補助金はよくなかった」ってみんな言うんですよ。「必要な変化を妨げることにしかならない。だから長い目でみていいことは何もない」って。
農業にも当てはまると思いますが、一次産業というのは放っておくと衰退しちゃうから、上からお金を落として支えなければいけないという発想。これは根本的に間違えてるんですよね。しかもお金を落とす先も、結局、生産者じゃなくて土木屋に落ちていたりする。日本は本当に産業政策として漁業のあり方を考え直さなくてはいけない。とくに復興に関しては。最後に、復興がらみでふたつのケースを紹介します。
いま震災復興で聞こえてくるのは、「土木インフラを戻そう」という議論ばかりです。ではそうした姿勢がはたして未来につながるのか。まったくそうではないというのが、奥尻のケースが示すところです。奥尻では600億くらいの被害額に対して、復興費用がそれより多く用意できたんですね。多く用意できたから、いままでよりも立派な防波堤をつくりましょうとか、船を全部新しくしましょうとかやったわけです。で、どうなったかと言えば、漁業者が半減してるんですよ。限界集落も増えている。
――インフラだけがぴかぴかになったと。
勝川 結局、奥尻で行われたことは、すでに高齢の漁業者が、これからも奥尻で漁業をつづけて行くための支援でしかなかった。魚を獲っても飯を食っていけないっていう状況自体は、まったく手つかずで放置された。そんな状況では新しい人なんて入って来るわけないじゃないですか。生活できないのですから。
いちばん大事なのは、その土地の漁師が魚を獲って、それで十分生活していけることです。この点で、奥尻とは対照的な事例が猿払でした。猿払は北海道のいちばん北の方の僻地の村です。元々ニシンが獲れて、天然のホタテもたくさん獲れたのだけれど、どっちも乱獲の結果、資源が減り何も獲るものがなくなった。「貧乏見たければ猿払に行け」というくらい壊滅的な状態になったんですね。
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勝川俊雄 カツカワトシオ
三重大学
生物資源学部准教授
1972年東京都生まれ。三重大学生物資源学部准教授。専門は水産資源管理と水産資源解析。東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得。東京大学海洋研究所助教を経て現職。研究のかたわら、政策提言のほか、持続可能な水産資源管理や、漁業の制度改革に向けた活動を行っている。
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