ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

未知の領域に挑み続けるミディトマト業界の先駆者


 「糖度を高めるには、土耕では水を切り、水耕では肥料濃度を上げればいい。でも糖度が高くなると果実が堅くなるし、昔13度になったトマトはえぐみがあって、かえっておいしくなかった。酸味とのバランス、食べた時の食感もポイントで、考えると今作っている品種『華小町』が一番いいように感じますね。うちは“ほどよく柔らかくて甘いトマト”が売り。そう『華クインR』、ちょっと水っぽい欠点はあるもけど10tは採っているところもあるんだよ。でも『華小町』で7t採ればいいと思ってるわけ。その代り、最低800円で売ればいいんだから。今、冬場は全て920円以上で売ってますよ」

 一方で高い値段設定にこだわらない方法も取る。トマトは5~7月に安くなり、パッケージ込みのミディトマト1パック(200g)の卸値は安い時には30円まで下がることもある。そうなるともう商売にならないので、奥松はあらかじめ値段を決め、量で買わせていく。たとえば1パック(120g)を80円に設定し、8パックでまとめて売って約1kgで640円。決して高いとは言えなくても、暴落する市場ほど悪くない。

 一見、奥松は豪胆な印象を受けるが、数字に関しては非常に繊細である。訊ねれば経費や出来事が起きた年月がスラスラと出てくる。小売価格、業者の利益率などが自然と頭に入っていて、そこから逆算して交渉に挑む能力を持っているようだ。

 「自分で値段を付けていくのに数字の感覚は必要。だけど、それ以上に大事なのはこだわったものを作ることだね。バイヤーが『俺は奥松という人間は好かんけど、これだけお客さんが評価するなら頭下げんといかんか』となればこっちのもの。そういうものができる作物は、自分にとってトマトなのかなという気はしてます」

 関係者に奥松の経営者としての印象を訊ねてみた。

 「これと決めたら、人が反対することでもとことんやる。そういえば一時期、上海蟹も手がけていた。ダメだと分かったらすぐやめるんだけど(笑)。規模が大きい仕事をしてるので、物怖じしないんですよ」(長浜)

 「夏にトマトが切れる時期があったので、できないかとお願いしたら、山の方にハウス借りて動いてくれましたね。すぐチャレンジするんです」(西河路)

 こうした言葉からは「挑戦を恐れない」像が浮かんでくる。そんな奥松にとって、新しい挑戦が宮崎太陽農園の設立だ。2011年、奥松農園はシステム開発を行うCEC(東京都渋谷区)との共同事業を開始した。

関連記事

powered by weblio