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海外レポート

農耕の源流エジプトを往く 第5回 異色の水田経営者誕生秘話

前回紹介した精米プラント事業者は水田経営者でもある。彼はなぜ、精米業をはじめ、そして農業に参入したのか。

 上の人物はマハムード・シャヒーン、エジプトの新興農業経営者である。

 氏が農業に至った経緯が面白い。4人兄弟の末っ子のマハムードは子供時代、兄たちとこんな約束をしたことに端を発する。

 「大人になったら、兄弟みんなで仲良く事業をやろう」

 父は小さな青果店を営んでいたが、その店舗を継いでも4人兄弟が食っていけない。

 そこで、彼はある商売を思いつく。月賦販売のカーディーラーだ。新車が金持ちしか買えない高嶺の花だった時代だ。分割払いがヒットし、村中で飛ぶように売れた。

 銀行から資金を借り入れ、車を買い、返済金より高い利子を顧客からとることで成り立つ商売である。

 芸術肌だった長男(画家としてイタリア在住)を除く、兄弟3人が仕入、営業、経営を分担した。商圏を広げ、取扱台数を増やしていった。田舎の地縁を生かせば、信用調査などわけなかった。仮に返済が滞っても、親類縁者に相談すれば本人に代わってすぐさま完済してくれた。“家系の名誉”を何よりも重んじるエジプト社会では、自分の親戚が借金踏み倒しの汚名を受けるのは一族の恥だからだ。

 しかし、このビジネスモデルはある日、突如として破たんした。

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