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しかし、松井さんは、メーカーである農家がその役割を担うべきだと考えている。
「どの国でも、ここ食えるんちゃう?というのは、本来農家の仕事だと思う。そこが利益の源泉を生む農業のサービス業的な部分なのに、そこをシェフに頼っていたら農家は相変わらず手足であって作業者のまま。食べるという文化は農家が主役となって担うというぐらいに勉強をしないと」
誰もができる、という訳にはいかないだろうが、こういう形が成り立っている。
【シンプルで、きめ細かな営業技術】
松井さんは、多い時は1日30のサンプルを飲食店に送る。
「電話をかけて、『サンプル要りませんか』と言ったら、要らんという人はいない。もしいたら、『あぁもうこの店つぶれるわ』と思うだけ」
サンプルを送る際につけるFAX送信状の文面は、練りに練られている。特に、先方にものを頼む時の言葉遣いは、押しつけにならないよう、慇懃無礼でないよう、言葉が注意深く選ばれている。受け取った相手は、商品の好き嫌いはともかく、粗略にできないと感じるだろう。松井さんはこのFAXの反応率を目標10%以上と設定している。
そのかわり、取引先にはほとんど会ったことがなく、全て電話のやりとりのみで対応する。
「上の世代のシェフは畑に見にきたがるが、30~40代の人たちは、お互いプロでしょというシンプルな関係で、僕もそれを望んでいる。きれいに言うと、モノが語ってくれるっていうこと?」と笑う。
【料理によって野菜の品質を考える】
松井さんは、今後ベビーリーフの他にも野菜の品目を増やしていく予定だ。今売れているベビーリーフだけを栽培していくと、成長が止まるのが早い、と考えるからだ。そのため、2棟の「商品研究ハウス」で次に栽培する品目を開発して、人も育てて、そろそろ品目を展開しようかと考えていた。その矢先、これまでの考え方を大きく転換させるような目から鱗の発見をした。
昨年から今年にかけてベビーリーフに加え4品目を開発した。そのうちのミニトマトを、今年の夏、松井さんはフランス料理の飲食店にサンプルとして送った。
「僕はこれだけの高品質のミニトマトを作ったんだから、店は買うべきや」と、松井さんは考えていた。
しかし、実際には売れなかった。自分の客はそんなに馬鹿じゃない。それでは、どこが良くないんだろうと謙虚にいろいろ考えて、あまりに料理のことを知らなさすぎたということではないか、という結論に至った。
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