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昆 今さら、日本人がこだわるような育種をアメリカや中国がどこまでやれるでしょうか。
田牧 それぞれの生産目的が違って、使っている伝統的な品種があるので、そう簡単にコシヒカリのような良食味の品種を作るくらいの改良はできないでしょう。日本のマーケットは関税や制度によって止められているので、海外からお金を使って開発する対象にはなり得ないですからね。
昆 農業機械に限れば、クボタやヤンマーが中国というマーケットで鍛えられた耐久性のあるコンバインを逆輸入するというのを始めたわけです。企業は気づき始めていますが、マーケティングとしてはまだそこまでたどり着いていないのが現状です。
田牧 防除や播種に使えるヘリにしても道具はそろってますよ。これに品種が合わさることで、さらに低コストなコメ作りが追求できるはずですが、果たして今の日本で国際競争力のあるコメ作りがどこまで可能かどうか。
昆 そういう中では、ウルグアイの取り組みは、本当にチャンスだと思いますね。
短粒種を現地のコンバインで刈ると収穫ロスは20~30%!!
昆 ウルグアイでの取り組みはいつから始められたのですか?
田牧 約10年前です。現地からの依頼もあり、南米のチリやウルグアイで日本品種の導入に向けた試験栽培をやってきました。
昆 そもそも、なぜウルグアイを選んだのですか?
田牧 生産コストが安くて良いコメが作れる市場にもコスト的に近い場所ですので。アメリカの東海岸にカルフォルニアから陸送するより輸送コストが大幅に安く、輸送コストではカルフォルニアよりヨーロッパに近いんです。長粒種をほぼ100%乾田直播で作っているところに短粒種を持ち込んだわけです。コシヒカリの改良品種などの種を供給してこういう風に作ってくださいと依頼して、時々現地に行って様子を見ながら作ってもらっています。
昆 テレビでは過繁茂に見えましたが、播種量はどれくらいでしたか。
田牧 こちらの標準的な播種量は10a当たり18~20kg。テレビに映っていたのは8kgですね。いや、実際は足りなかったんですよ。発芽期に水管理の問題からか深く入り込んでしまったのか、均一に発芽してこなかったんです。結果として1平方メートル当たりの苗立ち本数は予定より少なかったですね。
昆 収穫は向こうのコンバインで刈り取っていたようですが、収穫時の水分状態ではどのくらいですか。
田牧 22~23%は残っています。
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田牧一郎 タマキイチロウ
コメ産業コンサルタント
1952年福島県生まれ。74年、米カリフォルニア州の国府田農場で1年間実習後、帰国、大規模稲作経営に取り組む。89年、カリフォルニアに渡米、コメ作りを開始する。同時に始めた精米会社で「田牧米」を作り、米国内にとどまらず世界中の良質米市場にブランドを定着させた。現在は、コメを生産しながら、コメ産業コンサルタントとして活躍する。
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