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昆 カルフォルニアでもウルグアイでも、もっと小さな区画の方が栽培としてはいいんですよね。
田牧 追求していくと、コンバインの刈幅とトラクタの作業幅、播種機の幅がきっちり合った田んぼを作ることでしょう。水が何時間で入って、何時間で抜けるかが分かる田んぼは、2~3haの長方形でしょうね。
日本の稲品種の価値を見直し世界にマーケットを広げる
昆 ウルグアイにしてもカルフォルニアにしても現地の農家にはおいしいコメを作ろうとする文化がないという印象を受けますが……。
田牧 それは言えますね。味の違いは理解しますが、具体的に作るとなると、自分で努力しながら作っていく人というのはなかなかいないですね。意欲的な人は日本に来て交流していますが。品種に合った細かい栽培管理というのは、彼ら自身の手では無理でしょうね。
昆 ウルグアイでコメ作りをやってみて、農家にやれよと言っても、穀物価格の動向だとか全然違う発想で大豆やトウモロコシを作るというのが現地の農家のもう一つの要素ですよね。
田牧 新規参入の、しかも作ったことがないコメの契約栽培でお願いするわけです。ところがその反応は、20年前に私がカルフォルニアで始めたときと全く同じ状況でした。彼らは「新しいものに賭けてみたい、それも新しい品種で新しいマーケットに輸出・販売する。それに参加してみたい」という気持ちを持っているんですね。未経験という意味で不利な条件なのになぜ作るのかと聞いてみると、返事は「ウルグアイのコメ業者は農家に正しい情報を教えていない。彼らだけが儲かっていて、我われは搾取されている」と。
昆 お百姓は世界中同じことを言うんですね。穀物価格一般が上がってくる中では少数の人は動いても、全体的には大豆や小麦を作るのでは?
田牧 そうですね。ただし、輪作体系の中での水田なので、大きな経営におけるリスク分散と、色々な目的があっての作物選定の中でコメがなくなることはあり得ません。
昆 世界だけでなく、ミスミス自分たちの持っている価値を見捨てているだけで、日本の稲品種がおいしいお米だという自覚は消費者側にもないし、マーケットにもないという危機感と可能性を同時に感じています。田牧さんはある時期以降、ずっと日本品種を海外で作ろうとしていらっしゃっていますが、その可能性と限界性についてお感じになっていることはありますか?
田牧 日本の特殊な品種の可能性というのは非常に大きいと思いますし、マーケットは確実に広がっていきます。ただし日本で高コストで作ると、世界にマーケットはないんですよ、現実的には。ところがこの品種をカルフォルニアやウルグアイで作ることによってアメリカ国内、あるいはヨーロッパのマーケットにつながります。いわゆる寿司などを提供する日本食レストランは相変わらず増え続けていますから。日本のコメが海外で作られて、市場に出て行って、市場を大きくしていくというその効果は十分にあります。
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田牧一郎 タマキイチロウ
コメ産業コンサルタント
1952年福島県生まれ。74年、米カリフォルニア州の国府田農場で1年間実習後、帰国、大規模稲作経営に取り組む。89年、カリフォルニアに渡米、コメ作りを開始する。同時に始めた精米会社で「田牧米」を作り、米国内にとどまらず世界中の良質米市場にブランドを定着させた。現在は、コメを生産しながら、コメ産業コンサルタントとして活躍する。
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