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岡本信一の科学する農業

作物体中の硝酸態窒素を減らすために何が必要か


硝酸態窒素の問題のカギは投入する窒素の絶対量

 このように書くと硝酸態窒素を気にする必要はないと考えられるかもしれないが、私はそれでも低減する方向に考えるべきだと思っている。これまで多くのデータを測定した結果から見ると、作物体中の硝酸態窒素が高いと作物の糖度は上がらないという反比例の関係がある。さらに糖度が上がらないと栄養価が下がるなど悪影響を与える可能性がある。また、硝酸態窒素が高いと、食味がまずい(硝酸態窒素は、無味無臭であるというが、糖度が低いことでエグ味が強くなるのかもしれない)。加えて、土壌の地下水の硝酸態窒素による環境汚染などを考えれば、化学肥料や堆肥の投入量を減らし、作物体中、とりわけ野菜の硝酸態窒素濃度は低くあるべきだろう。

 では、どのようにすれば硝酸態窒素を低くできるのだろうか? 答えは、簡単である。土壌の硝酸態窒素の量を減らせばよい。こう書くと、肥料を減らせばよい、と考える方が多いと思うが、肥料よりも未熟な有機物の投入を避ける方が効果的だ。 前回の連載でも簡単に触れたが、未熟な堆肥の投入による影響は非常に大きい。土壌中のECを高め、硝酸態窒素の量が多くなり、その影響はかなり長期間にわたって続く。堆肥に含まれる窒素分は、天候や土壌、雨量などによりいつ土壌中に放出されるか分からない上に、窒素肥料としての投入量を考える人はほとんどいない。そのために、作物が必要とする窒素量よりもはるかに大量の窒素分を堆肥から与えてしまう場合も多い。

 私は、無施肥での栽培試験を数多く行なってきたが、化学肥料をかなり多めに与えたとしても、無施肥でも土壌のECや硝酸態窒素濃度にはほとんど影響を与えない。堆肥として与えられる量に比べれば、微々たる量だからだろう。一方、作物体中では施肥量を増やすと硝酸態窒素は高くなる傾向があり、無施肥で栽培すると低くなる。土壌分析では検出されない量であっても、作物は敏感に反応する。

 しかし、窒素を大量に含んだ堆肥を投入すると、土壌のECや硝酸態窒素が高くなる上に、作物体中の硝酸態窒素濃度も上昇する。しかも、堆肥は化学肥料と違い長期間にわたって影響が持続するために、作物への硝酸態窒素の影響は大きい。 先に触れたように本来問題にすべきは、未熟な堆肥であり、有機栽培か化学肥料を使った慣行栽培かではない。有機栽培では硝酸態窒素の問題解決できない。化学肥料をなくしたとしても窒素を含む堆肥を大量に投入すれば作物体中の硝酸態窒素は過剰になる。つまり化学肥料か有機資材かを問わず、投入する窒素の絶対量が大きいことが問題なのである。日本では、肥料にしても堆肥にしても最大限に投入したがる傾向があるが、技術的には最小限を追求するというのが正しい姿勢だと思う。

◆紛らわしい表現◆
 あまり厳密に書くと難しくなるのだが、「硝酸態窒素濃度」と「硝酸イオン濃度」は、表している数値が違うので注意が必要だ。硝酸態窒素濃度、硝酸イオン濃度は、mg/kg=ppmという単位が用いられる。

 硝酸態窒素は、NO3-Nなどと書かれ、硝酸イオン(NO3-)に含まれる窒素量だけを表す。そのため、硝酸態窒素と書かれていても、硝酸イオンを表した数値なのか、硝酸態窒素(NO3-N)なのか注意を要する。

 硝酸イオン値に、0.23をかけると、硝酸態窒素(NO3-N)濃度になり、さらに4.43をかけると硝酸イオン(NO3-)濃度になる。

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