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シリーズ TPP特集

なるほどTPP!〜来年からの本格交渉を前に〜

衆院の解散総選挙の時期を巡って与野党が小競り合いを繰り広げている間にも、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の交渉は着々と前進している。交渉が大きな局面を迎えた時、世論が形成されずに迷走するといった最悪の事態を避けるためにも、いまこそ改めてその行方に目を向ける必要がある。TPPとは何か、今どうなっているのか、まずはおさらいしてみよう。取材・まとめ 窪田新之助

アジア太平洋の新たな枠組み

 「TPP交渉への参加を検討する」民主党の菅直人首相(当時)が2010年10月、国会での所信表明演説で突如打ち上げた開国宣言。国民の誰もがそれまで聞きなれないこの言葉に、世論はいまも二分されたままだ。

 TPPの母体は、06年3月に発効したP4(パシフィック4)協定と呼ばれる4カ国の自由貿易協定(FTA)※1。もともとはアジア太平洋経済協力会議(APEC)※2に加盟するシンガポールとニュージーランド、チリ、ブルネイによる小さな経済連携協定(EPA)※3だった。それが09年11月に米国のオバマ大統領が交渉開始を表明したことで事態は大きく変わる。

 10年3月のTPP交渉の初会合ではP4に加え、米国とオーストラリア、ペルー、ベトナムが交渉を開始。10月の第3回会合ではマレーシアも加わってP9になった。これら9カ国が加盟するAPECは日本の輸出額の76%、輸入額の67%を占める非常に重要な地域である。そこで日本を抜きに貿易や投資に関する新たな枠組みが誕生しつつあることを目の当たりにし、菅首相が「平成の開国」宣言をするに至ったのだ。

 では、世論を二分するほどに大きな問題となっているのはなぜなのか。それは日本がこれまで締結してきたEPAと違い、TPPが「例外なき関税撤廃」をうたい、10年以内にほぼ100%の関税を原則的に撤廃することを目指しているからだ。

 国内議論の最大の焦点とされている農業分野では、コメも例外扱いを原則受けられなくなる。このため水田農業と経済的にも政治的にも密接に結びついてきた、反対派の代表格であるJAグループを中心に農業界からの反発は強い。同グループは他の農林水産や消費者の団体を巻き込んで1000万人の署名活動をするなど、大反対運動を展開している。一方、賛成派は「国際競争力のある農業を推進せよ」「本当の担い手をつくるべきだ」などと、むしろ国内農業を強化する転機とみている。

 賛成派の代表格である経済界では、たとえば自動車業界はTPPに日本が不参加ならば貿易上不利になり、米韓FTAを結んだ韓国に負けてしまうと主張している。TPPへの参加国が増えれば増えるほど自由貿易圏が拡大し、対照的に日本の輸出力が落ちてくるためだ。ただ、その産業界を支える労働者からは、規制緩和によって賃金の安い外国人労働者が日本に入り、仕事が奪われるといった不安が広がっている。またTPPの国内への影響事態がよくわからないことも不安に拍車をかけている。

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