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【土門「辛」聞】
統計部の作況指数を逆読みすれば福徳利運間違いなし
- 土門剛
- 第99回 2012年11月14日
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高温障害で水不足でも平年作
秋田県の作柄は、前月公表以降にさらに悪化していた。仲間たちが頻繁に現場レポートを送ってくれた。
「9月20日を過ぎた頃から、高温障害で稲が弱っていたのは誰の目にも明らかだった。秋田では9月には珍しく2日連続して35℃を超す日があった。この影響をモロに受けたようだ。しかも、8月中旬から雨が少なく、田圃は水不足に陥っていた。例年なら、9月10日頃が刈り取りのピークになるのに、今年はそこがスタートだった。最初の刈り取り分は、まずまずだったが、それ以降はあまり出来が良くない」
確かに8月と9月の2カ月は降雨量が少なかった。五城目町の気象庁観測ポイントをみれば、今年は、その2カ月で181mmしか降っていない。昨年の3分の1しかない。平年値(1981年~2010年)でも半分程度の降雨量だった。気温も例年にない高温で、30℃を超す日が9月14日から19日まで連続6日間も続いた。とくに17、18の両日は35℃を超す猛暑日だった。9月に猛暑日を記録したのは、後にも先にもこれが初めてのことではないかと思う。平年値(同)との比較でも、8月で1.9度、9月で4度と群を抜いて高かった。
これだけ気象の悪条件が重なれば、稲の生育に重大な影響を与えることは、常識で考えても分かるはずだ。湯沢・雄勝地区でコメの検査もやっている仲間の大規模生産者は、農水省公表の作況指数は「信用ができない」と前置きしてこう語る。
「水が足りた田圃の稲は平年作だが、水が使えなかった田圃の稲は、平年に比べて半俵から1俵は収量が落ちた。とくに雨の少なかった内陸部はひどかった。身が細くて収量が少ない上、品質も悪かった。一目見て収量が落ちていることが分かる」
秋田の作況指数は、東北農政局秋田地域センターが調査した。地域センターは、昔の統計事務所が、農政事務所などと統合して11年9月から発足した地方組織で、旧統計事務所の業務を受け継いだのは生産統計チームだ。県内380カ所の圃場で調査する。同センターがまとめた10月15日時点の「作柄概況」には、このような記述がある。
「【全もみ数】5月下旬から6月上旬にかけておおむね高温・多照で経過したこと等により穂数は『平年並み』となったものの、弱小穂がやや多くみられること等により1穂当たりもみ数が『少ない』ことから、全もみ数(穂数×1穂当たりもみ数)は『やや少ない』となった。【登熟】穂ばらみ期及び出穂期以降おおむね高温・多照で経過したこと等から登熟は平年に比べて『やや良』と見込まれる。」
この記述を読んで、同センターに電話をかけてみた。応対に出てくれた担当者に、現場の実態と違うと指摘したら、こう答えてきた。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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