記事閲覧
作況指数は、「10a当たり平年収量」を分母に「10a当たり予想収量」を割ったものである。従って、分母、分子とも正しい数字でないと、正しい作況指数をはじき出すことはできない。生産流通消費統計課が扱う。これが作況指数を狂わせる大きなファクターになることは、あまり知られていない。まずは農水省の説明を読んでいただきたい。
「稲の栽培を開始する以前に、その年の気象の推移や被害の発生状況等を平年並みとみなし、最近の栽培技術の進歩の度合や作付変動等を考慮し、実収量のすう勢を基にして作成されたその年に予想される10a当たり収量をいい、作柄の良否を表す作況指数の基準となっています」
時系列で整理してみよう。10a当たり平年収量は3月中旬にまとめられる。作柄概況は7月から11月まで各月15日現在で公表される。作況指数は9月15日現在からの公表となる。10a当たりの予想収量は、作柄概況8月分からの公表となる。その予想収量に作付面積を掛けたものが予想収穫量であり、それを平年収量で割り戻したのが、作況指数となる。従って、平年収量は作況指数をはじき出すだけなく、これら水稲作況調査は、農政上とても重要な数字になると認識していただきたい。戸別所得補償制度における交付金単価の算定や、農作物共済事業における共済基準単収の算定に、平年収量が使われることは前回説明した通りである。
全国と岩手県の平年収量を表1で示しておいた。岩手県を取り上げたのは、統計部が平年収量算定式の欠陥を証明するのに、格好の例と思ったからだ。
全国も岩手県も同じ数字が続くトレンドだが、後者は8年連続で533kgだ。奇異な印象を受けるのは、筆者だけではないと思う。
されはさておき、いかなる判断でこのような結果になったか、それを裏付けるバックデータのようなものとして、統計部は毎年3月中旬に開催する委員会で年産ごとに「生産事情」と題した簡単な資料を作成する。ホームページで確認できた分をまとめておいた(表2)。
毎年、コピーしたかのような文章が並んでいる。ただ12年産から「栽培技術指導方針」が加わっている。筆者の推測では、作況指数が実態を反映していないという省内外の批判をかわすべく、先のふるい目幅別の水稲収穫量の公表とセットで打ち出してきたもののようだ。残念ながら内容には何の説得力もない。
栽培技術指導方針は、稲作農家に対する都道府県の「栽培技術指導方針」をそのままコピーしただけのことである。それが現場で実践されているかどうかは何の検証もない。それでもって「平年収量」の算定要素に加えてきたのは、いかにも無責任ぶりを露呈した統計部らしい仕事ぶりではないか。
会員の方はここからログイン
土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)