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“被曝農業時代”を生きぬく

国に頼らない油脂作物による除染で農業経営の再建と脱原発を目指す



 原発事故後、稲葉氏らは国に頼らずに自分たちで除染しながら農業再建する道を探す。そんな中で出てきたのが油脂作物だった。

 国の事業を待っていたのでは、時間とともに土壌中の片にセシウムが入り込んで除染しにくくなる。とりわけ有機農産物は安全性を担保しないと売れない。また除染事業が終わるまで農作物を作れないのでは、農家が生産意欲を失ってしまう。それならば農作物を作って土壌の放射性物質を吸収させ、なおかつ換金できるものとして油が取れる作物を検討することにしました。

 組織名は当初、「大豆・ひまわり・菜の花プロジェクト」と名づけられた。つまり、これら3作物を田畑で育てて土壌の放射性物質を吸収させた後、収穫物を搾油して植物油として販売する。植物油には放射性セシウムは移行しないのだ。

 今回の構想ではレストランや各家庭から出る食用油の廃棄物を回収し、作物栽培で使うトラクターを動かし、デイーゼル発電機を稼働して搾油機を運転する。搾油時の副産物である油の搾り粕はセシウム濃度の高いものはメタン発酵を行ない液状化させモミガラに吸着させ、低いものは発酵肥料の原料にします。ヒマワリや大豆の収穫時に出てくる茎や葉は好気発酵で減量し、火力発電を併設しているごみ焼却場で燃やし、焼却灰はペレットにして、東京電力の敷地内に設置した最終処分場にお返しするという内容です。

 食用油は1本(270g)当たりヒマワリが840円、菜の花油が740円、大豆油が1580円です。生協などのご支援を得て販売に努力すれば、10a当たりの粗収益はおよそ15万円。5ha作れば経営が成り立つという計算です。

 昨年は福島と栃木の農家10戸が15ha作付けました。品種は大豆が「タチナガハ」と「サトイラズ」、「エンレイ」、ヒマワリが「春リン蔵」。ナノハナが「キラリボシ」と「キザキノナタネ」。いずれも収量性や機械適性に優れるほか、ハイオレイン酸やノンエルシン酸など食用に適した品種を選びました。

 栃木県上三川町に昨年9月、待望の搾油工房を完成させた。福島と栃木の収穫物を一括集荷して油を搾る場所だ。近所の飲食店から廃食油を回収し、ディーゼルエンジンを稼働し、これで搾油機や工房内の照明に必要な電気をまかなっている。発電経費は27円/1kwhとのこと。

 搾油機は韓国製です。価格は70万円ほど。私たちが子どもだったころは、ほとんどの農家が大豆を味噌やしょう油に加工して食べてきました。ナタネも食用油にしてくれる加工農家があちこちにあったんですよ。みんな自分の畑で作ったナタネを持っていき、それを食用油に変えてもらっていた。それが海外から安い輸入原料が増えて、製油は大手業者が手掛けるようになり、個人の搾油所はなくなってしまいました。

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