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エクセレント農協探訪記

福井県・大野市農協


 その指導方法もユニークだ。「カントリー利用田」の看板を圃場に立てていることだ。看板一枚で手抜きの米作りを追放できるのは、優良工場の品質管理体制と相通じるものがある。それだけ米生産農家のモラルが高いのだろう。農協職員は農家にハッキリいう。「捨て作りのような米をカントリーに出せば、他の農家さんが困ります」と。それで組合長に、「看板一枚で品質が揃うのは驚きですね」と尋ねたら、「ここの人はね県内でも温厚で篤実な性格ですから。看板一枚でもきちんと守ってくれます」という返事が組合長から戻ってきた。

 カントリーに出さない米も品質管理は厳しい。約100万俵の米がそうだ。この米は、農家の自主検査をさせてから、集荷後に農協の大型選別機で商品に仕上げる。自主検査は、一等米で主食用が 80%、二等米60%、酒米は二等米が80%、三等米70%という具合だ。農協施設での選別は一俵300円の費用がかかる。出荷はバラでも雑袋でも何でも可能ということだ。農協の説明では、個人で選別機を所有すれば大きな負担になる。それなら農協で選別してもらった方がプラスだという計算が成り立ち、農家もそれを納得している。中には選別機を自前で揃兄る農家もないではないが、農協の話では、その農家は自由米業者に売るのではなく、自分で最終商品に作り上げたいという「こだわり」があるからだというのだ。これだけ厳しい品質検査を実施するのは、品質を揃兄ないと、高く売れないという組合長の信念に基づくものだ。


【裏切られた新食糧法施行】

 11月から施行された新食糧法に大葦原組合長は大きな期待を弾ませていた。これまでの品質管理の努力がようやく報われるとの気持ちがあったからだ。もう一つの理由は、「あれだけ組合員農家さんも、農協職員も頑張っているのに、買取価格は同じでは組合員さんに申し訳ない」という事情もあったのだ。それでなくとも、組合員は農協のやり方に協力的だった。販売ルートが多様化され、大葦原組合長は高く売ることができるチャンス到来と判断したのだ。

 その期待も政省令が明らかになるにつれ、大葦原組合長の期待は急にしぽんでしまった感がある。生産調整も一律減反から手上げ方式になり、売ることも買うことも原則自由になったはずの新食糧法が、政省令で新法の中身が骨抜きにされてしまった。組合長が気に食わないのは、とりわけ手上げ方式になったはずの生産調整は元の一律減反制度と同じ仕組みに大幅に軌道修正されたことだ。大葦原組合長は、  

「米の価格暴落を防ぐのに減反が必要だというのなら、生産者が自主的に取り組む方法しかないよ。だって福井は繊維産地でもあったが、価格を守るため業者は必死になって機械を壊したりして自主減産で対応した。一方で流通を自由にしておいて、その一方で減反を強制する。こんなやり方は長続きしないのではないかな」

 と憤慨している。

 大葦原組合長が、こう考える背景には大野市農業の特殊事情がある。毎年11月から3月までは日本海特有の時雨に見舞われるのだ。米しかできない場所なのだ。大野市農業の特色を新食糧法で活かそうと思っていたら、いきなり出鼻をくじかれてしまった。ようやくスタート台についたら競争中止を告げられたようなものである。

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