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【新・農業経営者ルポ】
十勝で活躍の場を拡げるJCB乗りのイノベーター
- (有)鈴鹿プランニングサポート 取締役 (有)鈴鹿農園 代表取締役 鈴鹿誠
- 第102回 2012年12月14日
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十勝の中西部に位置する芽室町。全国的にも名の知れた農業の町であり、昨年の農業粗生産額は231億円に上る(JAめむろ)。当地では農家1戸当たりの平均耕作面積が30haをやや上回る程度だが、鈴鹿は父・諭三男の下で農業に従事して3年足らずで90haという状況に身を置く。まだ80年代半ばのことである。
「高校を卒業して農業を始めるにあたり、父と将来の目標を立てたんだよね。それは単純に100haを目指そうというたわいないもの。当時の十勝ではそのくらいが最大クラスだったんだね。大規模経営であれば省力化とコスト削減、そのうえで高収益が得られると考えた」
息子の思いを受けた諭三男は一気に拡大路線へ踏みだす。従来からの約3万本に達する原木シイタケの生産はそのままに、40haで作付けしていた小麦の連作を主に借地で増やし、鈴鹿はひたすら農作業に励んだ。
こうした動きに周囲の目は冷ややかだったかもしれない。それでも、実績を残す鈴鹿の元には次々といろんな話が舞い込んだ。
92年にカルビーポテトとの加工食品用ジャガイモの契約を皮切りに、94年ごろから生食用を帯広市場へ、今は取りやめているが、同時期から小豆を音更町の山本忠信商店へ、また4年ほどゴボウをJAと農産物集荷業者へ出荷していた。現在も継続しているところでは、97年から長イモをJAへ、07年から大豆を山本忠信商店へ(今年から大半をJAへ)、同年からカボチャを帯広市場と(財)北海道農業企業化研究所(HAL財団)へ、一昨年からニンニクをJAへ、今年から小玉スイカをJAの直売所である愛菜屋と同財団へそれぞれ供給している。
一方、生産量の割合できたほなみが40%、ゆめちからが25%、キタノカオリが20%、はるきらりが15%(12年)の小麦は08年から全量を同財団と取引する。生食用ジャガイモの一部もそこなどに納めるようになり、原木シイタケは愛菜屋で委託販売をしてもらっている。
経営面積は150haを超えた。内訳は、春きを含めて小麦が92ha、ジャガイモが30ha、大豆が20ha、長イモが7.5ha、カボチャが2ha、ニンニクが0.7ha、小玉スイカが0.3ha、ピーク時に比べ1/10に減ったとはいえ原木シイタケの生産は3000本に及ぶ。
ここに至るまでは経営危機も何度かあったようである。小麦については町内の7戸の農家で十勝はる麦の会という組織を結成しているが、鈴鹿の敷地内に建てていた乾燥・調製施設が強度不足を理由に工事の途中で関係官庁から中止命令が出、解体して一から造りなおす事態もあった。
そうしたなか、誰も実施していない、いや実施しようとしてもできない大規模経営をなぜ実現できたのかを問うとあっさりこんな答えが返ってきた。
「やる気と努力。あとは社交家の父の人間性かな」
だが、大規模化へ向かう途上で頭の中はきちんと整理されていたようだ。
コントラクターは十勝25万haがターゲット
「農業情勢の変化に伴い、特に北海道にとっては先行きが読めない環境にあった。でも、じっとしていたらされるだけ。だからこそ攻めの姿勢を持ちたかったんだよね。農産物の付加価値を高め、収益を確保するのも一つの手だけど、欧米のように農場を経営する者、作業を受託する者というふうに分化に対応する受け皿になれればと思った。そのとき、コントラクターを先行させちゃうとどうしても目先の収支に悩まざるを得なくなる。そこで考えたのが大規模経営からコントラクターを視野に入れるプラン。これなら幅が広がるからね。過剰投資に見えても自分とすれば充実した先行投資。農場での問題点の洗いだしにもなる。コントラクターも常に農家目線に立ち、単なる利益追求型で終わらないよう心がけることにした」
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鈴鹿誠 スズカマコト
(有)鈴鹿プランニングサポート 取締役
(有)鈴鹿農園 代表取締役
1964年、北海道芽室町生まれ。高校卒業後、農業に従事する傍ら、北海道拓殖短期大学に入学するも2年後に除籍。父・諭三男の下、目標を100haの経営に据え、3年ほどで40haから90haへ規模を拡大する。99年にコントラクター事業を行なう(有)鈴鹿プランニングサポートを、04年には(有)鈴鹿農園をそれぞれ立ち上げ、経営規模は150haを超えた。両社を合わせた売上は約1億5,000万円(11年)。12年6月、JAめむろの理事に就任した。
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