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特集

新政権に問う!これからの農業~経営者たちの声を聞け~


 これまでの農業政策とはまったく反対だ。農業を保護する名目で、地方自治体や中間団体である農協、事業者である農業者に税金がばらまかれていた。用途制限がなく、何に使われるかわからない。民主党は所得補償によって「農家1戸当たりの農業所得が7年ぶりに上がった」と自負するが当然だ。支給された約6000億円の税金が農家の所得に移転しただけだ。

 それで農業の経営がよくなったとか、国民の農業界への支持が高まったなどの話は聞いたことがない。所得補償はそもそも、農業の赤字を補てんする制度である。農業全体の赤字が増えれば支給額も増える仕組みだ。赤字化を促進する政策で、農業に展望が開けるはずがない。

 自民党政権からコメの減反対策も含めれば、こうした補助金に累計で8兆円が支給されてきた。その額に対して、納税者は政府から納得できる説明を受けたことがかつてあっただろうか。90年代には「国際化のための農業構造改善策」 と称された、WTOウルグアイラウンド対策費で6兆100億円が費やされたが、どう農業が改善されたのか筆者が尋ねて、説明できた政治家は皆無だ。

 選挙後しばらくして、TPP交渉参加が決定すれば、今度はTPP農業対策費が「何兆円必要か」が焦点になるだろう。民主党が下野し、再び自民党政権になってもまた、不毛な農政の歴史が繰り返される気がしてならない。とはいえ、筆者が提言する国民への農業バウチャー配布こそバラマキ政策ではないか、との批判もあろう。

 使う・使わないは利用者の選択の自由であり、受け取る・受け取らないも農業者の選択の自由である。クーポン欲しさに努力したくないという農場があれば、もらえないだけだ。

 だから、クーポンの受け入れ農場の対象としては、規模の大小や経営体が家族か企業かなどの制限をかける必要はない。

 主要政党はいずれも、ニュアンスの違いはあれ、「農業の成長産業化」を謳っている。そのため、政策の力点を「就農促進」(民主)、「農業の企業化」(維新)「株式会社の新規参入」(みんな)といった、政治家があるべき農業の姿を勝手に規定するターゲティング政策を採用しているが、とんだ見当違いだ。

 政治がすべきは農業バウチャーを国民に配布するシンプルな方向性を示し、行政への制度設計の指示とその実現実行だけでよい。実際、各農場がどんな経営形態をとるか、誰を雇用するか、どんな商品・サービスを提供するか、農業界の経営者の腕の見せ所だ。政治家があれこれ指示するなど、おこがましい。

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