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海外レポート

オランダ農業視察ツアー訪問記 第3回 フロリアードを機会にオランダと日本の花生産の違いを考えてみた

6月のツアーに参加して16年ぶりにオランダの施設園芸を見てきた。前回は初めてだったこともあって温室の大きさに驚き、システム化の進み具合に驚き、オランダ人の大きさに驚いた。今回は施設園芸の進展具合を確認することが目的だったが、オランダを見て廻りながら改めて日本とオランダの花生産の違いを考えさせられた。


オランダの花は安い

 日本の花が高すぎるというべきなのかもしれない。バラ10本束が3ユーロ、スプレーギク10本束は2ユーロ。執筆時現在96円だが、単純化して1ユーロ≒100円とするとスーパーでの小売価格はスプレーキク20円、バラ30円となる。日本では市場価格でもありえない数字。日本のスーパーやホームセンターではこの5倍程度で売られている。日本では花の価格が安いと嘆いているが、国際価格は遥かに安い。むしろ日本の生産者はまだ恵まれているのかもしれない。アメリカではカーネーションやバラの生産はコロンビアなど中南米からの輸入花によって壊滅状態。1000本/坪という日本の3倍の生産性を誇るオランダのバラですら、ケニア・エチオピアからの花で同じ現象が起きている。時給16ユーロという高い人件費に耐え切れなくなって、廃業するかアフリカに農場を開くかのどちらかを迫られているとのこと。


種苗を押さえるものが生産を制する

 花と野菜の施設園芸はオランダの国策。オランダの花の種苗業者は世界のマーケットを握っている。オランダには花の種苗業者が集まっていて、生産農場は熱帯高地に出て行っても、種苗産業の本拠地はしっかりオランダに残っている。訪問したOlij Rozenでバラの生産を見せて頂いたが、自前の品種を持っているのでその展示圃場を兼ねて生産しているとのこと。キクを見せて頂いたRoyal van Zantenは生産農場ではなく品種の展示圃場であった。もちろん、日本の農場とは1ケタ違う規模なので、展示圃場と言ってもちっぽけなものではない。

 世界の花生産はオランダを中心に回っている。品種だけでなく苗も押さえているというとピンと来ない方もいるかもしれない。日本ではまだ発展途上の育苗の分業化だが、オランダはじめヨーロッパでは苗は購入するのが当たり前である。日本では苗を買うことは新品種導入とほぼ同義だが、オランダでは生産用の苗は種苗業者から購入するのが当たり前で、種苗業者はウイルスチェックなどを確実に実施した苗を供給している。種苗業者としては新品種開発よりも、むしろ苗生産の方に重きがあるのかもしれない。長さ20cm弱の無病のソイルブロック苗が供給されるオランダと、挿し穂の購入時にはウイロイドを心配しなければならない日本とで、同じキク生産者でも全く環境が異なることは、残念ながら16年前とほとんど変わっていない。

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