記事閲覧
【海外レポート】
オランダ農業視察ツアー訪問記 第3回 フロリアードを機会にオランダと日本の花生産の違いを考えてみた
- 静岡県農林技術研究所花き科長 本間義之
- 第3回 2012年12月14日
- この記事をPDFで読む
オランダの花は安い
日本の花が高すぎるというべきなのかもしれない。バラ10本束が3ユーロ、スプレーギク10本束は2ユーロ。執筆時現在96円だが、単純化して1ユーロ≒100円とするとスーパーでの小売価格はスプレーキク20円、バラ30円となる。日本では市場価格でもありえない数字。日本のスーパーやホームセンターではこの5倍程度で売られている。日本では花の価格が安いと嘆いているが、国際価格は遥かに安い。むしろ日本の生産者はまだ恵まれているのかもしれない。アメリカではカーネーションやバラの生産はコロンビアなど中南米からの輸入花によって壊滅状態。1000本/坪という日本の3倍の生産性を誇るオランダのバラですら、ケニア・エチオピアからの花で同じ現象が起きている。時給16ユーロという高い人件費に耐え切れなくなって、廃業するかアフリカに農場を開くかのどちらかを迫られているとのこと。
種苗を押さえるものが生産を制する
花と野菜の施設園芸はオランダの国策。オランダの花の種苗業者は世界のマーケットを握っている。オランダには花の種苗業者が集まっていて、生産農場は熱帯高地に出て行っても、種苗産業の本拠地はしっかりオランダに残っている。訪問したOlij Rozenでバラの生産を見せて頂いたが、自前の品種を持っているのでその展示圃場を兼ねて生産しているとのこと。キクを見せて頂いたRoyal van Zantenは生産農場ではなく品種の展示圃場であった。もちろん、日本の農場とは1ケタ違う規模なので、展示圃場と言ってもちっぽけなものではない。
世界の花生産はオランダを中心に回っている。品種だけでなく苗も押さえているというとピンと来ない方もいるかもしれない。日本ではまだ発展途上の育苗の分業化だが、オランダはじめヨーロッパでは苗は購入するのが当たり前である。日本では苗を買うことは新品種導入とほぼ同義だが、オランダでは生産用の苗は種苗業者から購入するのが当たり前で、種苗業者はウイルスチェックなどを確実に実施した苗を供給している。種苗業者としては新品種開発よりも、むしろ苗生産の方に重きがあるのかもしれない。長さ20cm弱の無病のソイルブロック苗が供給されるオランダと、挿し穂の購入時にはウイロイドを心配しなければならない日本とで、同じキク生産者でも全く環境が異なることは、残念ながら16年前とほとんど変わっていない。
会員の方はここからログイン
本間義之 ホンマヨシユキ
静岡県農林技術研究所花き科長
京都大学農学部卒。静岡県農業試験場でキクの機械定植、直挿し、一斉収穫、短茎栽培など、キク栽培の省力化に取り組んだ。浜名湖ガーデンパークなどを経て平成22年より現職。現在はバラの日持ち向上や環境制御などに取り組んでいる。
海外レポート
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)