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岡本信一の科学する農業

経営に合わせて栽培技術を選ぶ(1)



技術を追求する方向をもっと作物に向けよう

 さて、日本の栽培技術レベルが低いという話に戻ろう。原因は色々と考えられるが、最も大きいのは栽培技術を追求する方向が間違っているせいではないだろうか。日本人の美徳でもあると思われる、栽培に対する思い入れが非常に強い方が多い。海外では日本人のように土壌や自らの農産物に対して強い思い入れはない。実は、その思い入れが強すぎることによって、悪い方向に向かっているのかもしれない。

 例をいくつか挙げてみよう。決して揶揄しているのではなく、過剰な思い入れによって視野が狭くなってしまいがちなケースを取り上げているので、誤解の無きようお願いしたい。

 まずは、土づくりに熱心な人。「農業の基本は土にある」ということで、堆肥づくりや土壌微生物の活動、微量要素といったことにハマり込んでしまうケースも見受ける。

 続いて、大型化を目指し、経営の効率化を図る人。特に野菜などの大規模経営の場合、栽培コストの中でも人件費の割合が高いために、最少の人員で切り盛りしようとしてしまう。同じく、機械化によって効率を上げようとすることも多い。

 そして最も多いのが、様々な資材や技術を試して、常に新しい技術を取っ替え引っ替え導入し、技術向上を目指しているケースである。

 どれも、悪いことではないどころか、栽培や経営にとって非常に重要な要素であるが、栽培という観点から見ると、最も気を遣うべき主役が別にあると思うのだ。

 それは、作物である。作物に気を遣うのは当たり前ではないかと思われるかもしれないが、実際には実践できていないことが多い。作物が取れなければ経営が成り立たず、安定して高収量・高品質の作物が収穫できれば経営にとって非常に大きなプラスとなる。しかし、意外なことに栽培技術の個々の部分について思い入れがあるわりに、作物に対しては淡白なのだ。


土づくりの真意は土壌を維持すること

 先の例から考えてみよう。土づくりは確かに重要だが、土をつくるとは言葉ばかりで、実際には土壌を維持することを示している。土づくりという言葉からは土壌を良くしようというイメージを抱くのだが、文字通りの土づくりを行なおうとすると、元の土壌を根本的に変えるということになり、時間もお金もかかってしまう。実際には土壌が劣化するのを防ぎ、土壌を維持するための作業を土づくりと呼んでいるのだ。

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