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岡本信一の科学する農業

経営に合わせて栽培技術を選ぶ(1)


 なぜ、土壌の維持を図るのかといえば、長年にわたって安定的に作物を育てるためであり、作物にとって不具合がなければ基本的に問題はないと思う。

 今年、「ソバを栽培するためにはどのような土づくりをすれば良いのか」という相談を受けたのだが、私の第一声は、「何もしなくてもいいんじゃないですか」だった。その理由は、ソバというのは基本的に他の作物も作れないような劣悪な条件でも栽培できる作物であり、いわゆる良い土壌を必要としないためである。あえて、土壌を「良く」する必要はなく、維持する努力さえすれば十分。もちろん、排水など最低限の努力はすべきだが、それとて、経済性を考えて行なうべきだろう。

 ひとつ書いておくと、土壌を維持するために最も避けるべきなのは、圃場を裸の状態で放置しておくことだ。日本ではあまり問題になっていないが、何も植えていない裸の畑は浸食されやすい。圃場を裸にしておくと日本は雨が多いので土壌が雨で流されるし、太陽の直射を受け温度変化も激しく、土壌の腐植を消耗させてしまうためである。浸食によって表土がなくなると、土壌の維持どころではなくなってしまう。特に傾斜のある圃場では、当然注意しなければならない。

 ギリシャや北アフリカが、かつてローマ時代に穀倉地帯であったことをご存知だろうか。塩類集積といった問題ではなく、土壌が侵食されて表土がなくなってしまったために不毛の土地になってしまったのだ。

 裸で放置しなければ、日本の場合はかなり土壌の劣化を防ぐことができる。堆肥づくり、土壌改良資材の投入、微生物の繁殖といった細かなことに比べれば、畑に何かを植えておくというのは根本的な話だが、盲点になりがちである。

 ソバの例は極端であるが、土づくりとは作物に合わせて行なうもので、「良い土壌」という明確な基準がない目標を目指すよりも、今ある土壌を活用して最大限の収量を得れば良い、という見切りをつけるべきなのだ。強調したいのは、栽培で重要なのは作物を育てることであって、土づくりではないということである。なかには、有機物還元ための堆肥づくりが目的化してしまっている方も見受けられたりする。堆肥に関しては、以前にも書いたように未熟な堆肥の投入による栽培の阻害さえ起こっている。あくまでも、土づくりは、作物づくりのためのステップに過ぎないのである。(次号につづく)

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