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TPPとRCEP、どっちを選べば得か
土門 新政権で気になるのは、党首討論会(11月30日)での自民党、安倍晋三総裁の発言だ。安倍総裁は、「聖域なき関税撤廃は関税自主権を手放せと言っているようなもの」と発言している。この発言は、主権を侵害するようなことが交渉テーマなら、TPPには参加できないと言っているのに等しいと思う。TPP交渉には、わが国の憲法や法律を超える項目がいくつかあり、その認識に立つなら参加できないはずだと思うが、その辺のことがきちんと理解できているのかな。
酔人 民主党マニフェストもトーンダウンしたね。
土門 所詮、下野確定の政党が打ち出すマニフェストなので論評に値せずだが、選挙間際になって、ややトーンダウンさせたのにはあきれたよ。TPP参加を公約の前面に押し出して候補者に踏み絵を踏ませていた勇ましさはどこへ行ったのかな。しかも笑ってしまうのは、「日中韓自由貿易協定(FTA)、東アジア包括的経済連携(RCEP)と同時並行的に進め、政府が判断する」という表現を使った部分だ。
酔人 RCEPとは初めて耳にする言葉だな。
土門 高いレベルでの包括的経済連携協定ということでは、TPPと同じようなものだが、まずは地域性と顔ぶれの組み合わせが違う。TPPは、ニュージーランド、チリ、米国、豪州、ペルー、メキシコ、カナダの太平洋をグルッと取り巻く7カ国と、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシアの南シナ海に面した4カ国が交渉を進めている。一方のRCEPは、東南アジア諸国連合(ASEAN)と、すでにFTAを締結している日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国との包括的経済連携のことで、ASEANには、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマー、マレーシア、カンボジア、ラオス、シンガポール、ブルネイの10カ国が参加している。
酔人 TPPとRCEP、GDP(国民総生産)ベースでどっちが大きいか。
土門 どちらにも日本の参加を前提にしない比較では、RCEPはTPPの7割程度だ。ただTPPは、全体の4分3は米国が占める。それに比べ、RCEPは、中国やインドの経済躍進国もあれば、インドネシアのように急成長が確実に見込める国が並んでいる。将来的な魅力という点ではRCEPに軍配が上がる。
酔人 TPPとRCEPで重複している国があるね。
土門 ベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイの4カ国は二股交際だ。韓国はすでに米国とFTAを締結しているので、米国主導のTPPはパス。RCEP参加には名乗りを上げている。中国は、TPPには最初から関心がない。RCEPを舞台裏で操ろうとしているのではないかな。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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