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酔人 米国の関心はどこにあるのか。
土門 農業がクローズアップされているが、米国の狙いは、農業ではない。彼らがもっとも得意とする分野か、あるいは日本の冨を収奪できる分野だ。その両方に共通するのが金融や保険だろう。
酔人 農業分野はどうか。
土門 金融で要求が通るなら、米の例外措置みたいなものは米国にとって鼻糞程度だろう。それを譲って金融や保険の要求を勝ち取ることは、アフリカの原住民にガラス玉と金を交換するようなものだ。
酔人 何が狙いか。
土門 ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険の300兆円に上る資金だ。国債を大量発行する米国は、最近は引き受け手が少なくなって困っている。そこで目を付けたのが郵便貯金や簡易保険の豊富な資金ということだ。07年に民営化された(株)ゆうちょ銀行と(株)かんぽ生命保険を上場させ、米系金融資本に買い取らせようという魂胆があるのではないかな。そのためにTPP交渉を利用するというのが米国が秘かに描くシナリオと思う。日本の資産を略奪することにおいては常習犯だ。戦後、米国は2回もジャパン・マネーを掠め取った。まずは71年8月のニクソン・ショックだ。同年7月、日本の頭越しに中国と電撃的に国交を樹立したショックではなくて、その翌月に、ドル紙幣と金との兌換停止を宣言したニクソン・ショックのことだ。金本位制の放棄と説明した方が分かりやすいか。次いで85年9月のプラザ合意だ。これは以降の円高相場のきっかけとなった。
酔人 兌換停止でジャパン・マネーをどう掠め取るのか。
土門 ニクソン・ショック以前は金本位制だから、貿易の決済は金で行なっていた。輸出代金をドルで受け取っても、金に交換すれば、日本に持ち帰ることができた。ところが兌換停止になれば、金では持ち帰れないので、実質的にドルでの決済となる。しかも通貨制度は変動相場制に移行していたから、ドルを大量に持ち帰れば、円高になってしまう。円への交換による差損を嫌ったドル資金は、米国債の購入に使われるケースが多かったようだ。
酔人 詐欺同然だな。
土門 詐欺そのものだよ。マイケル・ハドソンという米国の経済学者は、ニクソン・ショック直後の72年に、「超帝国主義国家 アメリカの内幕」という著書の中で、「アメリカが、歴史上帝国を建設したどの国よりもどうやってに行ったかをあなたは見せてくれた。われわれは史上最大のペテンをうまくやってのけたわけだ」と総括していたよ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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