ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

“被曝農業時代”を生きぬく

国に頼らない油脂作物による除染で農業経営の再建と脱原発を目指す

油脂作物で農地の除染をしながら、その収穫物で植物油を製造・販売して農業経営の再建、さらには脱原発までを目指す一般社団法人グリーンオイルプロジェクト(栃木県上三川町)。代表の稲葉光國氏(68)らは、油脂作物を2年3作体系で育てる技術を被災地の農家に普及するため、植物油の販売網を築く一方で作物別の除染効果を調査している。中でも注目すべきはヒマワリ。国の除染事業では放射性セシウムの吸収力が高いとみられていたが、農水省は実証栽培の後に「除染効果は低く、普及の段階にはない」と断定した。これに対し、稲葉氏は「むしろ作物の中では除染効果が高い」と反論する。

 私たちが福島県南相馬市でヒマワリの栽培試験をしたところ、移行係数は0.12でした。これをホームページに掲載した直後、農水省が発表した移行係数は0.0067と私たちよりずっと低かった。これをマスコミ各社は大々的に報道しました。そして除染費用の大半は大手ゼネコンが落札した表土除去や客土、プラウによる反転耕に使われました。

 移行係数の違いはヒマワリの採取時期にあります。農水省の開花期に対し、私たちは成熟期。農水省の場合、ヒマワリを景観作物と位置づけている関係でセシウムが葉や茎、花頭に十分に吸収される前の開花期に採取した。だから移行係数が低いのは当然。私たちのように搾油作物と位置づけ、成熟期まで育てれば、栽培直下の土壌のセシウム濃度を1年目で37%減らせる。ヒマワリは搾油率が30%あり、有力な油脂作物です。今回の除染事業ではハイオレイン酸の品種「春りん蔵」を使いました。


除染と搾油ができる作物として大豆とナタネにも目を付けた。これらで2年3作の輪作体系を目指す。

 大豆は作物の中ではカリウムの含有量がシイタケに次いで2番目に多く、除染作物として期待しましたが、2011年の栃木県の子実の調査結果では移行係数は0.05にとどまりました。ただ、大豆は空気中の窒素をアンモニア態で固定する。粘土鉱物などに吸着したセシウムを引き剥がし吸収移行を促進する効果もあるのではないかと考えられます。同時に地力を向上させるため輪作の要として重要になります。また、植物油としてはアンチエイジング成分とされるビタミンEを最も豊富に含み、コールド製法による圧搾大豆油は全くないので希少価値は高い。

 ナタネは11年段階では栽培試験の事例が少なく、除染効果を十分に確認できていません。ただ、土壌の汚染状態をみると、しなかった部分では354ベクレル(単位はkg。以下、同じ)、ナタネが生育した部分では246ベクレル。茎には50ベクレル(移行係数0.14)、子実には40ベクレル(0.11)が含まれていました。これはヒマワリとほぼ同じで、かなり高い除染効果が見込めるでしょう。

関連記事

powered by weblio