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読み切り

特別寄稿住専問題は決着後が恐い
系統3段階制空中分解必至!

ここのところテレビ・新聞で報道されない日がないほど住専処理問題は大詰めを迎えつつある。いまや国際語にまでなったこのトラブルの実態と行方を土門氏に会話体でわかりやすく解説してもらった。
Q 「住専問題」って何ですか。それになぜ農協系金融機関がそういうものに関係するのか、さっぱりわからない。

A 住専は住宅金融専門会社の略で、70年代に個人住宅向けローンを目的に設立された会社です。農協系の住専「協同住宅ローン」を含めて8社ある。新聞で住専問題の対象となっているのは、最後発で不良債権も比較的少ない協同住宅ローンを除く7社のことだ。いずれも都銀、長信銀、信託、地銀、生保、損保などが母体になって設立された。ところがその後、設立母体である銀行が個人住宅ローンに乗り出すようになって、子会社の住専は市場を奪われてしまった。

Q 親会社が子会社の仕事を奪うなら、子会社は当然整理すべきだったのでは?

A 本来ならそうなるはずだ。それが住専にはできなかった。その理由は、実に馬鹿馬鹿しいことだが、住専7社の社長ポストがすべて大蔵官僚の天下り指定席になっていたからなんだ。大蔵省に首根っこを握られている銀行は社長ポストのポイ捨てができなかった。それで天下り社長を喰わせるためにも不動産関連融資に力を入れることになった。ところが運が悪かった。時あたかもバブル絶頂期の頃で、「不動産関連」といえば聞こえはよいが、実態はノンバンクなどに地上げ資金を貸し込んだわけだ。

Q 農協系金融機関が住専に貸し込むことになったのはどうしてだろう。

A 農林中金、都道府県信連、共済連など農協系金融機関は住専の設立当初から融資をしていた。最初はおつきあい程度の額だった。ところが、バブル崩壊直前の80年代末から90年にかけて急増したんだ。そのきっかけは、バブル退治を目的に金融機関に不動産融資の自粛を求めた大蔵・農水両省が出した通達だった。この通達で銀行は住専からいっせいに資金を引き上げることになった。

Q その銀行が引き上げた分を、農協系が埋めたわけですか。

A そういうことだ。農協系が銀行に代わって融資に応じる、一種の肩代わり融資みたいなものだった。農協系全体の住専向け融資は、通達が出される前の88年年度末で2兆9000億円しかなかっだのが、通達が出された直後の91年度末には5兆6000億円に増えた。なかでも信連の融資急増ぶりが目立った。


貸し手責任があるの明確 銀行による肩代わりは困難


Q 農協系は&rdQuo;大蔵省と銀行にだまされた&rdQuo;と主張していますが……。

A その主張は当たらないね。農協系も歴とした金融機関だ。融資に際しては十分な審査をして担保を取らなければならない。ところが実態はその手続きをしていなかったようだ。バブル経済破綻直前に、クズ同然の融資案件を住専に押し付けた銀行にも責任はあるが、貸し手のほうできちんと審査を実施して担保を取っていれば何も問題は起きなかった。まして農協系は住専に担保を一括管理させていたと説明している。これは金融機関としてあるまじき行為だ。その意味で農協系にも重大な貸し手責任があるのだ。

Q しかも「80年10月通達」に反するという説もありますね。

A 詳しいね。その通りだよ。大蔵・農水両省から全国信連会長に出された80年 10月通達は、住専に信連が融資する道を開いたのだが、それは個人住宅ローンに限るという制約がついていた。個人住宅ローンなら信用事故が少なく、審査機能が弱い信連が融資しても問題がないという判断があったからだ。

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