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【Opinion】
「コメ業界で何が起きているのか?」グロテスクなコメ政策が招いた悲劇
- 熊野孝文
- 2013年01月17日
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「このくず米のサンプル、キロいくらするかわかる?」。30年以上コメの仲介業を営んでいる社長に聞かれた。見せられたのは、色彩選別機でくず米を選別して下に落ちた着色粒等混入のくず米。業界用語で言うところの色選下のくず米。これまでこうした色選下のくず米は処分品扱いでキロ30円程度が相場であったが、なんとこの色選下がキロ168円で買われたという。
下物の下物がこうした価格で取引されているのだから、整粒がいくらか混ざっている一般のくず米の価格がいくらするか推して知るべしで、歩留まりを考えると検査一等米と変わらない相場になっている。こうしたくず白米を使用して製品を作っている味噌、穀粉、焼酎業界からは原料米コストの値上がりを吸収出来ず、このままでは「廃業、倒産」という悲痛な声が上がっている。
いったいくず米の世界で何が起きているのか?
その原因は、一義的には24年産のくず米発生量が近年になく少なかったことにあるが、本質的な原因は、戸別所得補償と水田利活用対策がセットになった現在のコメ政策にある。生産者に所得を直接補償しながら高米価を維持するため生産調整を実施、しかも転作作物に主食用ではないという詭弁でエサ米、米粉用米といったコメを作らせ、生産物の何倍もの助成金を支払うといったグロテスクと表現できる歪なコメ政策が招いた結果と言える。
なぜそうなのか?加工原料米の世界にスポットを当ててコメ業界で今何が起きているのか順を追って解説したい。
消えた24年産振り下米?絶対量不足で異常高騰
農水省が昨年10月末に公表した10月15日現在の24年産水稲の作付面積と予想収穫量。この中に参考データとしてライスグレーダーのふるい目幅別重量分布状況が掲載されている。このデータは初めて公表されるもので、それには全国ブロック別のふるい目幅別の重量分布が記されている。全国合計では2.0ミリ以上の割合が81.7%で平年を4.9ポイント上回っており、それ以下1.9、1.85、1.80、1.75、1.70ミリの重量割合はいずれも平年を下回っている。これは24年産米が高温、多照の気象条件で稔実歩合が高まり整粒になったコメが多く、未熟粒の発生が少なかったということを意味している。
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熊野孝文
鹿児島県鹿屋市 生まれ。コメ記者歴40年、長年「米 穀新聞」の記者を務めてきた。同 紙は2021年10月、堂島コメ市場 不認可に伴い廃刊、以後フリーラ ンスとして取材・執筆活動を続け ている。著書に『ブランド米開発 競争』(中央公論新社)など。
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