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Opinion

「コメ業界で何が起きているのか?」グロテスクなコメ政策が招いた悲劇

米価が高騰している。それも選別した網下のコメやくず米の暴騰だ。網下でキロ300円(1俵1万8千円)だとか、くず米でもキロ180円などという話も聞く。「キロ300円なんて俺の1等米の出荷価格より高いじゃないか」と驚かれる向きもあると思う。その煽りを食って、網下やくず米の需要者としての加工業界は存続の危機に立たされている。米穀流通に詳しい熊野氏にその理由を聞いた。

 「このくず米のサンプル、キロいくらするかわかる?」。30年以上コメの仲介業を営んでいる社長に聞かれた。見せられたのは、色彩選別機でくず米を選別して下に落ちた着色粒等混入のくず米。業界用語で言うところの色選下のくず米。これまでこうした色選下のくず米は処分品扱いでキロ30円程度が相場であったが、なんとこの色選下がキロ168円で買われたという。

 下物の下物がこうした価格で取引されているのだから、整粒がいくらか混ざっている一般のくず米の価格がいくらするか推して知るべしで、歩留まりを考えると検査一等米と変わらない相場になっている。こうしたくず白米を使用して製品を作っている味噌、穀粉、焼酎業界からは原料米コストの値上がりを吸収出来ず、このままでは「廃業、倒産」という悲痛な声が上がっている。

いったいくず米の世界で何が起きているのか?
 その原因は、一義的には24年産のくず米発生量が近年になく少なかったことにあるが、本質的な原因は、戸別所得補償と水田利活用対策がセットになった現在のコメ政策にある。生産者に所得を直接補償しながら高米価を維持するため生産調整を実施、しかも転作作物に主食用ではないという詭弁でエサ米、米粉用米といったコメを作らせ、生産物の何倍もの助成金を支払うといったグロテスクと表現できる歪なコメ政策が招いた結果と言える。

 なぜそうなのか?加工原料米の世界にスポットを当ててコメ業界で今何が起きているのか順を追って解説したい。


消えた24年産振り下米?絶対量不足で異常高騰

 農水省が昨年10月末に公表した10月15日現在の24年産水稲の作付面積と予想収穫量。この中に参考データとしてライスグレーダーのふるい目幅別重量分布状況が掲載されている。このデータは初めて公表されるもので、それには全国ブロック別のふるい目幅別の重量分布が記されている。全国合計では2.0ミリ以上の割合が81.7%で平年を4.9ポイント上回っており、それ以下1.9、1.85、1.80、1.75、1.70ミリの重量割合はいずれも平年を下回っている。これは24年産米が高温、多照の気象条件で稔実歩合が高まり整粒になったコメが多く、未熟粒の発生が少なかったということを意味している。

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