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編集長インタビュー

コメ一粒の可能性に懸ける 一粒点播×乾田直播への挑戦

岡山県では、1970年代には乾直の圃場が広がっていた。圃場整備によって田植機が導入され、乾直は減り、現在は恵まれた天候を味方に多くは移植栽培を行なっている。同県に乾田直播の一粒点播の夢を追いかける農業者がいる。専業農家に転向した嘉数末弘氏に、多収品種みつひかりで挑む乾直一粒点播やドリルの薄播きなどの試行錯誤について話を聞いた。

みつひかりの野生に戻ろうとする力を逆手に

昆吉則(本誌編集長) 昨年、みつひかり2003の乾田直播(以下、乾直)の一粒点播に取り組まれたと伺いました。稲姿を見せていただきましたが、見事なものですね。

嘉数末弘 そうですね。自然界にポンと種を落とされて思い通りに大きくなって。一穂当たりの粒数が400粒以上ついていたことにはビックリしました。まだ播種機が不安定で、種が落ちないところは欠株になるんです。発芽して青く見えるようになるまでの数週間は、胃が痛くなります(苦笑)

昆 それにしても、やっぱりこの稲を見ると、一粒点播はすごい。

嘉数 底力がね。改めて僕らのこれまでの認識を変えなきゃダメだなと思います。今までは茎数を取るために沢山種を播くというやり方でした。籾というのは、落とせば落とすほど、分けつはしてもお互いがぶつかり合って淘汰されて面積当たりの茎数が減って、結局中の方は枯れてなくなります。芽は出るんだけど途中でなくなる苗もある。そうすると、期待したように穂数は取れず、1株が7~8本とかいう小さい株になってしまうと。

昆 むしろ、コシヒカリなんかより、みつひかりの方がそういう性質が強く出ますね。そもそも、野生種に近い生命力の強い稲だから。

嘉数 そうですね。だからハイブリッドのコメというのは、逆に言ったら、野生に返ろう、返ろうとする力が強いわけじゃないですか。それを逆手にとって、上手に利用していけば面白いですよ。

昆 一粒点播はいつから始められたんですか?

嘉数 一昨年にアケボノという品種で始めました。近畿中四国農業研究センターの藤本先生の協力のもとバーチカルハローシーダ(8条播き)を持ち込んで。

昆 播種量はどのくらいですか?

嘉数 10a当たり300~400gくらいですね。他にもみつひかりだけでも、ドリルで1.6kg/10aの薄播き、ポット苗を使った一粒移植、無代かき移植、慣行移植といった方法もやっていて、ここに来ていただければ何でも見られますよ。

昆 いろいろな方法を試していらっしゃいますが……。

嘉数 一粒移植が一番安定しています。ただ、発芽率が絡んでくるので欠株を嫌う一般の農家さんには難しいですね。

昆 欠株しても問題ないのにね。

嘉数 これだけ発芽して、大きな株に育てば何の問題もありませんね。乾直も出穂が揃います。初期には長いもの、短いものとありますが、追いついてくるんです。

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