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専門家インタビュー

美しい村を生むローカルの視点

食と農のグローバル化という世界の潮流に対抗するように、各地で生まれつつある食料生産のローカル化の動きとその重要性を描いた『シビック・アグリカルチャー』。それに共感するカルビー(株)の松尾雅彦相談役が、翻訳者の北野収氏に話を聞いた。(まとめ/窪田新之助)

国家的価値基準への疑問

松尾 『シビック・アグリカルチャー』※1を読んで眼から鱗の思いでした。私は多くの機会を捉えては、この本を売り込んでるんですよ(笑)。

北野 それはありがとうございます。

松尾 ただ、この本は読み方が分からないと、また問題意識を持っていないと、何が良いのか理解しにくいと思う。そこで今回、インタビューをお願いしたわけです。まず伺いたいのはシビック・アグリカルチャーの意味です。

北野 ライソン自身は海外に出かけて行って、多くの事例をみてきたというわけではないですが、この言葉には米国だけでない普遍性を持たせているはずです。一つはグローバリゼーションではなく、良い意味でのローカリゼーションの重要性ということになると思います。お金が地域社会にとどまることで、経済的免疫が高まるということですね。日本には地産地消という言葉がありますが、もっと幅が広いというか、深い意味の言葉になると思います。

松尾 幅広いとは?

北野 シビック・アグリカルチャーは民主主義が何かということを言っています。地産地消と違い、政治的概念が入っている。民主主義というのは、地域社会に多様な人々がいて、ある程度に権力が分散していて、社会的多様性があるわけです。それはまさしく米国の建国の理念に関わってくることです。そういったものをライソンさんは「善」と考えたんです。ただ、そういう多様性は放っておくと、すぐに消えて均一化してくる。では、民主主義を残すために何が必要かというと、農業でいえば家族経営が必要で、彼らと一緒に仕事する加工業者や流通業者も必要だと。それによって国全体の民主主義の根底部分がメンテナンスされるということですね。

松尾 どういう経緯でこの本を翻訳されようと思ったんですか?ご来歴も絡めながら、聞かせてください。

北野 少し長くなります。私は元々、農水省で約10年間にわたり行政官をしていたんですね。ちょうど食管法や農業基本法の作り直しの時期。一部の先進的な人々以外は、私も含めて旧基本法モードで仕事をしていました。国際化がやってくるのは仕方がないと。だから産地形成や高付加価値化を一層進め、国際競争の中で生き残れる人や産地を育てることの意義を信じて疑いませんでした。

松尾 当時のお仕事は?

北野 国際部を経て、かつての構造改善局の地域計画課にいました。そこで村づくり対策に関わったんです。生産に直結した話というより、村々の風景とか伝統文化を活かした取り組みを表彰しようという。そんな仕事をこなす中で、二つのことを考えるようになりました。一つは、こうやって美しい村を保全する人に光を当てることは良いことではないかと。ただ、一方では逆のことも考えていた。表彰することは地域興しのためだが、果たして、そうした地域がグローバル化の中で本当に持続可能性があるのかと少し疑ってもいたんですね。
 そんなことを思いながら、米国の大学に留学させてもらう機会が二度ありました。二度目は農水省を退職してからですが、その時の研究テーマが「グローバル化時代の農村活性化対策」だった。論文指導の先生はハンガリー人で、カール・ポランニーの友人。彼は私の研究テーマの内容を聞き、すぐに「ありえない」と全否定してきた。最初、なぜ?と思いました。地域興しをやって一定の観光客が来たり、農村の特産品の開発や販売ルートを作ったりすることが、どうして全否定されるんだろうと。


松尾 一体どういった理由だったんです?

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