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松尾 そんな場所の農業はどうなっているんですか?
北野 車で走ると耕作放棄地だらけですよ。日本の中山間地域を連想させられますね。それと南部のアパラチアの方。特に所得が低いのはサウスダコダとかアラバマとか。そういうところは過疎化も進んでいるし、地域社会が崩壊しています。こういった米国の負け組地域の情報は日本には入って来ないんですよね。企業や農務省というフィルターを通してしか、なかなか情報が来ないから。
NAFTAの影響にしても、国レベルで把握するのでは駄目だと思います。そのインパクトを調べている研究をみると、米国よりメキシコの方がフルーツや野菜は強い。メキシコの中部から北部では大規模経営でやっていて、米国の主要産地と比べても一定の競争力を確保している。米国も地域によっては自由化で農業が駄目になっている地域もあるんです。だから個々にみれば、単純に米国が勝ち組、メキシコが負け組とはいえないかもしれない。要は米国でもメキシコでも小規模な農家は負けているが、プランテーション的な大規模経営は勝っている。資本主義的経営が勝ち組で、家族的経営が負け組になっている。だからナショナリスティックな目線では駄目で、地域でみていかないといけない。
松尾 重要なのは、今後もそういうパターンが将来的に変わらないのかということです。どう思われます?
北野 私は必ずしもそうは思いません。シビック・アグリカルチャーにしろ、メキシコ南部で起きているローカリゼーションにしろ、またはそのインターナショナル版であるフェアトレードにしろ、負け組の地域から出ている動きですよね。そういう動きが現場から広まり、松尾さんのようなお立場の方や問題意識を共有できる生産者、消費者の方々が注目してくれれば、希望的観測が生まれるんではないでしょうか。
松尾 そうですね、私は辺境から改革を起こすことが必要だと思っていますよ。(3月号に続く)
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北野収 キタノシュウ
獨協大学外国語学部
教授
トーマス・ライソン著『シビック・アグリカルチャー』翻訳者。農水省や日本大学を経て、現在、獨協大学外国語学部交流文化学科教授。米国のコーネル大学で修士号(国際農業開発論)と博士号(都市計画学)を取得。
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