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岡本信一の科学する農業

経営に合わせて栽培技術を選ぶ(2)

前回に続いて、農家の思い入れが強く、日本の農業技術レベルが低くなっているという話題を続けたい。

 農業経営者であれば、最小限の人数で最大の効率を上げたいと考えるだろう。特に大規模経営になり雇用する人数も多くなると、人件費の占める割合も高く、人の割り振りが重要になってくる。栽培管理の工程は、作物を安定的に収穫するために手を抜いてはならないが、人数不足が理由でラフになってしまうケースも起こり得る。

 例を挙げると、露地トンネル栽培における冬場の換気作業がある。晴天であれば、日中暖かくなると換気しなければ、作物は蒸されて傷んでしまう。大規模な農場になると朝から換気を始めて、全部を開け終わるのが昼前になり、昼過ぎから閉め始めて夕刻になってやっと全部閉め終わるという状態にもなり得る。作物寄りの観点から言えば、最適な時間に換気をしたいのだが、限られた作業人員では対応できない。これではできる作物はバラバラになり、病気の発生なども増えてしまう。

 さて、どうしたら良いのだろうか。これを考えることが歩留まりを上げる、安定的に収穫するということを優先する場合のポイントになる。人の効率化を図ったことで、栽培の安定性が損なわれている場合、どちらを優先すべきなのか? どちらが経済的なのか? 計算すれば、栽培の安定を優先する方が利益は増えると分かるはずだ。

 機械化も同じことである。今では様々な機器が開発され、かつては効率が悪すぎたことが容易にできるようになった。新たな活用方法も、従来から行なわれてきた作業の効率化を図るだけではなく、栽培という視点が入ってくる。

 例えば、追肥型の露地栽培は規模が大きくなれば技術的に難しかったが、現在は比較的容易に行なえる。追肥型の栽培は作物にとって非常に有利であるが、基本的に元肥による栽培がまだ大勢を占める。あまり機械化の過程では話題に上らないが、機械に投資する際には従来からの工程を効率的に行なうだけではもったいないと思う。

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