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岡本信一の科学する農業

経営に合わせて栽培技術を選ぶ(2)



新技術や資材の導入効果はなぜ得られないのか?

 農業技術への思い入れを最も強く感じるのは、肥料や土壌改良材、特殊な資材、特殊な栽培方法などを色々試す方々である。これも間違ってはいない。様々な資材や方法を試すことはいいことだと思う。だが、色々試してみても、多くの場合、その効果ははっきりしない。いい場合もあるし、悪い場合もある。

 簡単な資材で説明しよう。石灰は、酸性土壌を矯正するための資材だが、アルカリ性の土壌に施用すれば、さらにpHが高くなり逆効果になる。石灰はpHの低い酸性土壌には有効だが、pHの高いアルカリ土壌には向かない。

 このように土壌改良材、微生物資材、有機質資材などは、その特徴をつかみ、適切な場面で使用しなければ効果が得られない。当たり前だが、資材メーカーは良い点ばかりを強調し、どのように使用すると良くないのかは説明してくれない。新しい資材を試す前に、メーカーにどのように使用すると効果がないのかを聞いてみるべきだ。もし答えが返ってこないようであれば、メーカーですら効果が現れる使用方法を分かっていないのだから、使わない方がいい。

 肥料についても同じことで、施肥量の問題だけでなく、特に追肥の場合は「いつ」施用するのかというのも重要である。ほとんどの人が、どの肥料を「何月何日に」「どのくらい」散布したかには興味があるが、作物の生育ステージのどの時期に散布したかは聞かない。作物の側から見れば、どのタイミングで施肥されるかが問題なのだ。作物にとって不要な時期、不要な条件の時に与えれば逆効果なのだから。

 最近では微量要素資材なども増えてきているが、効果が得られないケースが多い。例えば、排水性が悪い畑に微量要素を施肥した場合、畑は改善されるだろうか。お分かりの通り、排水性などの土壌の物理性の改善は、前もって実施しなければ高価な微量要素資材を投入してもその効果は期待できない。

 排水が悪いというのは極端な例かもしれないが、微量要素以前に窒素、リン酸、カリウム、カルシウムなどの多量要素の過不足やその他の減収要因があれば、微量要素を追肥しても効果がないのは当たり前である。

 かつての収量の増加や効率の向上策は、簡単だった。肥料を沢山与える、効果のある新規の農薬を使用する、新品種・大型機械を導入する――。簡単に多くの問題は解決していたが、現在、この当たり前の状況が見えにくい。以前よりも問題が小さく複雑で、複合的な要因によるので、簡単に良くなった理由や悪くなった理由を突き止められないのである。

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