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土門「辛」聞

TPP、勘定違いで米国はがっちり権益ゲット

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加問題について、自民・公明両党による「連立政権合意」は、「国益にかなう最善の道を求める」という表現で本格交渉入りを目指す。TPP交渉での国益とは何か、筆者なりに考えてみたいと思う。

問い 安倍晋三首相は、TPP交渉への正式参加を就任後初の訪米で表明するか。

土門 組閣後の会見(2012年12月26日)で「十分な情報を得て、分析してから総合的に検討していきたい」と述べている。選挙期間中の「自分が交渉すれば、国益を守れる」という発言もあり、参加することは確実だ。ただ今回の訪米で参加を表明することはないという報道が伝わってきている。

問い 「国益にかなう最善の道」をどう解釈すればよいか。

土門 民主党政権では、TPP交渉に参加すること自体が「国益」という説明だった。無条件での交渉参加という印象だ。今回の総選挙でTPP交渉への参加に慎重な言い回しをしていた自民党議員の数は多かった。それを反映して政権合意では、そのような表現を使わざるを得なかったものと思う。現時点では、関税撤廃の「例外扱い」を認めることが交渉入りの一丁目一番地というような説明をしているが、これはコメなど農産物を「例外扱い」にして欲しいという意味に受け取られている。でもTPP交渉は、この問題だけではないのだ。

問い どんなテーマがあるのか。

土門 交渉で扱われるテーマを俯瞰的に整理しておこう。交渉は、「関税」と「貿易ルール」という括りで整理ができる。前者は、物品市場アクセスと呼ぶこともあり、関税の撤廃や削減がテーマになる。後者は、サービス貿易や非関税分野のルール作りということだが、テーマは多岐に及ぶ。ざっと羅列すれば、原産地規制(関税免税の適用ルール)、食品の安全に関する手続き、製品の規格に関する手続き、インターネット・ビジネス(電子商取引)のルール作り、投資の保護・自由化、公共事業発注の公平なルール(政府調達)、特許・著作権の保護や海賊版取締、カルテル防止(競争政策)、輸出入・税関手続きの簡素化(貿易円滑化)、ビジネスでの入国・滞在手続きの簡素化(商用関係者の移動)、環境保護、労働者保護、分野横断的事項などだ。TPPは、コメなど農産物への関税撤廃の「例外扱い」だけを交渉する場ではないことを分かって欲しい。

問い 米国の関心事項は何か。

土門 米国通商代表部(USTR)のカーク代表が12年4月10日(現地時間)、ワシントンを訪れた玄葉光一郎前外相に、そのヒントらしきことを発言している。外務省の資料では、その部分はこうだった。
 「TPP交渉参加を希望する国は全て、現交渉参加国がコミットしている高いスタンダードを達成するとのコミットメントを示さなければならないとの説明があった。双方は、物品(goods)の関税の最終的な扱いについては、TPP交渉プロセスの中で決まっていくものであることを確認した」

 これを説明すると、カーク代表は、前段で述べた「高いスタンダードを達成する」が、米国にとって交渉のゴールで、後段での関税について述べた部分は、「TPP交渉プロセスの中で決まっていく」と説明して、米国はそれに固執していないよ、と述べているのだ。聞きようによれば、そのゴールに到達するために、米国側が投げてきた「餌」のようなものと思えばよい。民主党政権は、その「餌」にすぐに飛びつこうとした。その発言の翌日、内閣府の石田勝之副大臣(当時、総選挙で落選)が、首相官邸での関係副大臣会合で、「(米国側の)これまでの全ての品目をテーブルにのせるという言い方から変化したと受け止めている」(同4月12日付け朝日新聞)と記者団に語っている。

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