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土門「辛」聞

TPP、勘定違いで米国はがっちり権益ゲット



問い 外交交渉は機密扱いが当たり前ではないか。

土門 一般常識ではそうだけど、ことTPP交渉については、これは通用させてはいけないと思っている。外交交渉は、安全保障(軍事)関係と、通商関係というカテゴリーに分類すれば、厳密な機密扱いのルールが適用されるのは、前者だと思う。後者は、経済活動と密接に関連することもあって、交渉の結果次第では国民の財産権に影響を及ぼすこともある。しかもTPPは、ISD条項のように相手国の主権を侵害しかねないような規定も含まれているようなら、なおさらのこと憲法が保障したデュー・プロセス・オブ・ローの原則、「適正手続き」は尊重されるべきではないか。そもそも、その法理を教えてくれたのは米国ではなかったか。参加すれば、メリットがあるというのなら、どうして情報公開を厳しく制限するのか、米国の言い分は完全に矛盾している。グローバル展開する超巨大企業にのみ多大なメリットがあるからこそ、情報公開を制限してきたとしか思えない。

問い 外国でも同じ懸念が出ているようだね。

土門 タイのケースを紹介してみようか。12年11月、TPP参加を表明したインラック首相が、「政府はTPPに関する米国との交渉を開始することに合意したが、憲法の要請に従い、すべての関係者にり、また議会に提出して承認を得ることになる」(同11月19日付けネーション紙)と懸念を表明している。農業国のタイには国内に自由貿易協定(FTA)交渉に反対する勢力がいまだ強く、かりにTPPを締結しても、議会の承認を得られないというケースが想定され、もしそうなれば、対外信用を失いかねないという配慮から、インラック首相は情報開示を促してきたのだ。これには、11年11月に韓国が米国との間で締結した米韓FTA交渉が影響しているように思う。同協定については韓国内でいまなお国民の不満が強まっている。その教訓を参考にしたのではないか。

問い 米韓FTA交渉は評価しないのか。

土門 日本の新聞が報じない興味ある事実を紹介しておこう。米韓FTA交渉直後の11年12月29日、韓国議会が通商手続法を成立させている。日本のメディアはどこも伝えていないが、わが国立国会図書館立法情報課は、いち早くこの事実を紹介している。12年2月の「立法情報」だ。韓国では、「条約の締結及びは憲法上大統領の権限に属し、批准には国会の同意が必要となる。しかし、通商条約の場合、経済的、社会的に多大な影響を及ぼすにもかかわらず、交渉過程が不透明で、国民の意見が十分に反映されていないことが問題とされたことから、第17代国会(04~08年)以降、通商条約に対し、交渉過程も含めて国会の統制を強化するための関連法案が継続的に発議されてきた」という経緯があった。詳しくは、「立法情報」に譲るが、最大のポイントは同法4条の「通商条約の手続及び履行に関して情報公開請求があったときは、政府は『公共機関の情報公開に関する法律』の規定により請求人に公開しなければならず、相手国の要請等の事情がある場合を除き、交渉の進行を理由に公開を拒否できない」とする規定だ。つまり、TPP協定のようなものであっても、通常の情報公開法の対象になると明言したのだが、これと野田前首相の志位委員長に対する答弁を比較していただきたい。野田前首相の認識がいかに甘かったかが分かる。

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