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“被曝農業時代”を生きぬく

原木シイタケの生産とともに里山再生を目指す(上)

原木シイタケで経営をする農業者にとって、福島県の森林はなくてならない存在だ。阿武隈山系を中心とした山々では戦後から、専門的な集団が良質な原木を生み出してきた。県境を越えて供給される原木の量でも全国の4割を占める一大産地だ。それが東京電力福島第一原発事故によって、県内の森林は放射能に汚染された。いま、美しく手入れがされた里山から木を切り出す音が聞こえることはない。その原木を使い続けてきた農業者はどうしているのか、茨城県つくば市の(有)なかのきのこ園を訪ねた。

良質な福島県産原木

 なかのきのこ園は原木シイタケの栽培を始めて40年以上になる。飯泉孝司さん(64)は、一代で築き上げた同社を全国最大規模の生産組織に成長させた。圃場面積3.5haにある20棟のビニールハウスで、毎年50万本のほだ木でシイタケを育ててきた。

 うちでは原発事故が起きるまで、毎年22、23万本の原木を購入していました。一度植菌したら、シイタケが取れる間、3年ほど使い続けます。原木はごくわずかに種苗会社が植菌したものを買っていますが、それ以外はすべて福島県産。もう40年以上の付き合いですね。

 なぜ福島県産を使うかといえば、品質と価格、どちらをとってもほかに及ぶ産地はないから。幹が太すぎず細すぎず、長さもちょうど良い。うちのような大規模経営になると、植菌するのに機械を使うもんだから、素直な木がどうしても必要になるんです。曲がっていたり、枝の痕跡であるがあったりすれば、機械加工に向かない。福島県は原木を生産するため里山を丁寧に管理しているのだから、他の産地に負けない良質な原木を提供してくれるんです。


原木確保のため全国を奔走

 それほど信頼していた福島県産の原木だったが、原発事故をきっかけに供給がストップ。全国で福島県産を愛用していた農業者は関係機関に窮状を訴えた。これを受けて林野庁が2010年11月4日に発表した需給情報によれば、全国で120万本の原木が不足。その後、放射性セシウム濃度の指標値が厳しくなったこともあり、昨年9月末現在ではさらに増えて189万本が足りなくなった。

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