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彼の経営を貫くポリシーとは何かを聞いた。こんな答えが返ってきた。「世界一の最強農家を目指す」と。
「競争相手は隣の家、あるいは別の産地の人よりも美味しいコメを作っていればそれでいいと考えてきたのが、日本の農家だった。もうそんな時代じゃない。最強農家の条件? 仮に生産に秀でていて世界一だとしてもそれではダメ。売るテクニック、そして行動力、それらの的確さを含めて世界一でなければ、最強になんかなれっこない。だから、自分としては世界一の最強農家を目指して足りないものを補い、得意分野を伸ばすことをひたすらやっていくだけだね」
では、世界一の最強農家に君臨した先にあるものとは何か?
「今後、人口爆発とそれにともなう食糧難が襲う可能性を考えれば、コメを増産していく必要があると思う。それに対応していくのが農業者としての務めでしょう。とはいっても、日本から世界に向けて輸出すれば問題解決できるわけではないから、世界各地で作って世界の人々に食べてもらいたい。今、台湾で始めたことを中国、米国、あるいはベトナムなどで展開していこうかと思っている。また、コメ以外にも有機栽培ベビーリーフの輸出なども同時にやっていく予定でいますよ」
玉木を取材した筆者の率直な感想は「ああ、この人って去勢されていないな、オスなんだな」というものだった。むき出しの野心、闘争本能、生存本能といったものは、筆者が知る限り、同世代の農業者から感じられることがない。そんな玉木は、きっとコメ農家にとって困難な事態が予想されるTPPに日本に参加することになっても、あらゆる手段と策を使って生き残ろうとするはずだ。もちろん、農業開国の日には無傷ではいられまい。しかし、今後も日本と台湾を中心とした、東アジアを股にかける農業経営を確立していければ、彼が目指す世界一の最強農家の座を狙える位置にいることだろう。(本文中敬称略)
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玉木修 タマキオサム
(株)新潟玉木農園 (株)エバーフリー
代表取締役社長
1979年新潟県味方村(現・新潟市)生まれ。94年地元中学校を卒業後、農事組合法人サカタニ農産(富山県南砺市)に勤務。1年勤務後、地元に戻り重機整備や工場での内装製造などの仕事に携わる。99年就農。2003年父から経営権を譲り受ける。05年コシヒカリ輸出を思い立ち、台湾に初渡航。11年生産部門を担う(株)新潟玉木農園およびコメの集荷・卸売・輸出業務を担う(株)エバーフリーの2社を設立。契約生産者含めた生産規模は約200ha(うち自作地19ha)。品種はコシヒカリ、こしいぶき。年商約4億円。
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